小浜・中野 ノーヒットノーランの快挙達成 1988年以来の聖地見据え 第103回全国高校野球長崎大会 第6日

【2回戦、壱岐商―小浜】史上10人目の無安打無得点試合を達成した小浜のエース中野=諫早市第1野球場

 相手のスコアボードの「H」は「0」のまま。九回2死、小浜のエース中野は最終打者を三振に仕留めた。「八回から意識していた」という大会史上10人目の無安打無得点の快挙。それでもヒーローはいつもと一緒だった。表情一つ変えずに整列へと向かうと「みんなが守ってくれたおかげ」と淡々と言葉をつないだ。
 入学時は「投手より好きな」捕手だったが、1年時から何でも屋として小所帯チームを支えてきた。主将を任された今季は公式戦のほとんどを一人で投げて春とNHK杯の準優勝に貢献。制球力抜群の県内屈指の右腕に成長して今大会を迎えた。
 春は「内角にどれだけ投げ込めるか」、NHK杯は「リリースで力まない」。これまでも常に課題を意識しながら大会に臨んだ。今回はぎりぎりまで投球フォームを改善。「左脚をしっかり上げる」ことで体重移動がしやすくなり球威が増した。130キロ前後の直球にスライダーなどを有効に配球。無失策のバックとともに凡打の山を築き、10三振も奪った。
 「今まで会ったことのないような選手。適応能力がある。あの落ち着きは何なんだ」。チームを半世紀以上率いる溝田監督もうなる力投だった。
 見据えるのは1988年の初出場以来遠ざかっている夏の聖地。堂々の第3シードだが、大黒柱は「僕らは決して強いチームではない。我慢して、粘るのが小浜の野球」とおごりはない。与四球3を反省して「守備が慌てないように無駄なボール球は投げないようにしたい」と最後まで冷静で、頼もしかった。

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