メクル第562号<旬感 V・ファーレン> DF 加藤聖選手(背番号15) 世界を見据える19歳

「努力は必ず誰かが見てくれている」と語る加藤聖選手

 「まだまだでした。自分の実力不足」。振(ふ)り返(かえ)るのは、3月27日のJ2第5節のアウェー大宮アルディージャ戦。後半開始からピッチに立ち、Jリーグデビューを果たした試合です。2点先行され負けている状態(じょうたい)に「とにかく前に行くしかない」と途中(とちゅう)出場しましたが、さらに2点を奪(うば)われ敗戦。「チームの流れを変えることができなかった」と悔(くや)しさをにじませました。
 次は6月13日の松本山雅(やまが)戦。初めての長崎でのゲームで、しかも初先発。「連勝中で勢(いきお)いがあった。前の試合からスタメン変更(へんこう)があったのは、自分だけ。この勢いにうまく入り込(こ)もう」と試合に臨(のぞ)みました。
 迎(むか)えた前半20分。ボールが左サイドに展開(てんかい)されると、「澤田(さわだ)選手の背後(はいご)から走り込めばフリーでもらえる。自然と体の動きとイメージができた」。得意の左足のクロスから見事に都倉(とくら)選手の得点をアシストしました。試合は1-0の無失点で勝利し、攻守(こうしゅ)に貢献(こうけん)。「たくさんのサポーターが来てくれて、手拍子(てびょうし)などで良い雰囲気(ふんいき)をつくってくれる。ホームは最高だな」。
 次節のアウェー栃木(とちぎ)SC戦も先発に名を連(つら)ね、弾丸(だんがん)アーリークロスで再(ふたた)び都倉選手の得点をアシスト。「自信があったから蹴(け)れたけど、うまくいきすぎて少しびっくりした」と笑顔。「全体練習が終わった後、残って都倉選手とクロスの練習をしていた。いろんなパターンのクロスを練習し、アシストにつながった」と振り返ります。
 中学時代は、レベルの高いサッカーを目指してJFAアカデミー福島に入りました。「実は恥(は)ずかしくて言えなかったんですが、最初は補欠合格(ほけつごうかく)だった。合格者の中に辞退(じたい)が出て何とか入れた」。ついていくため必死に練習に励(はげ)みました。高校3年の6月に同期の植中(うえなか)選手とV長崎の練習に参加し加入内定。精度(せいど)の高い左足のクロスと90分通してできる上下運動が持ち味。U-18日本代表の試合にも出場するなど順調にサッカー生活を送っていました。
 一方で、V長崎加入1年目の昨年は、フィールドプレーヤーの中で唯一(ゆいいつ)、出場機会がありませんでした。「苦しく、悔しい1年」でしたが、努力を続けました。「まだ年齢的(ねんれいてき)にも若いし、ここで腐(くさ)ってしまったら先はない。必ず誰(だれ)かが見てくれている」
 そんな経験を忘(わす)れないために書いた文字は「日々努力」。シーズン前の決起集会でも掲(かか)げた言葉です。プロになるきっかけをつくってくれたV長崎で試合に出続けて、J1昇格(しょうかく)に向け勝利に貢献する。そして「このまま世代別の日本代表に選ばれて、パリ五輪に出場したい」。長崎から世界を見据(みす)えています。

 【プロフィル】2001年9月16日生まれ。兵庫県出身。JFAアカデミー福島U-15、同U-18からV長崎に加入。U-18日本代表に選出され、いち早く世界と戦った。昨年は、U-19日本代表候補(こうほ)として活動した。休日は温泉(おんせん)などに行ってリラックスする。171センチ、64キロ。19歳。

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