早すぎる終戦…桃田賢斗の恩師が口にしていた〝コロナ延期の影響〟「金メダル確率20%ダウン」

まさかの予選敗退に終わった桃田(ロイター)

嫌な予感が的中――。東京五輪のバドミントン男子シングルス1次リーグ(28日、武蔵野の森総合スポーツプラザ)、世界ランキング1位で第1シードの桃田賢斗(26=NTT東日本)が同38位の許侊熙(韓国)に0―2のストレート負け。1勝1敗の2位で予選敗退が決まった。「金メダル確実」と言われた、大エースの早すぎる終戦。世界中から驚きの声が漏れたが、桃田の恩師は1年前にある〝懸念材料〟を口にしていた。

これが五輪に潜む魔物なのか。格下相手に日本の絶対エースが大苦戦。第1ゲームは10―5とリードを奪いながらも、10連続失点を喫して逆転された。続く第2ゲームも11―8から6連続失点を喫する苦しい展開。最後は粘りを見せ、1点差まで迫ったが、得意のヘアピンショットがネットに嫌われて勝負あり。「試合の入りは良かったけど、途中から自分の気持ちが引いてしまった。自信を持ってプレーできなかったのでそれが良くなかった」と肩を落とした。

メダル獲得が有力視された2016年リオ五輪では、違法賭博問題で代表から外れた。19年には国際大会の年間最多勝利数を更新する11勝をマークしたが、20年には遠征中のマレーシアで交通事故に巻き込まれ、右眼窩(がんか)底を骨折。手術を経て再びコートに帰ってきたものの、またしてもまさかの結末となった。

しかし昨年夏、桃田の小学校時代の恩師・吉川和孝氏は本紙の取材に一抹の「不安」を示していた。桃田は19年の勢いのまま東京五輪に挑むはずだったが、新型コロナウイルス禍で大会は1年延期に。吉川氏は「20年にだったら、相手は桃田が強いというイメージで、途中であきらめてくれるんですよ。そういう嫌なイメージを持っていたと思うけど、1年先になったら分からなくなる。もう白紙になるからね」と指摘していたのだ。

コロナ禍が勢いに水を差す形になったと言い、さらには国際大会が相次いで延期や中止となった点もマイナスに働くと分析。「各国のトップの選手は大会に追われて、なかなか一から練習できないことが多い。でも、大会がない期間にゼロからやり直しができる。だから僕の感覚で言ったら20年は金メダル100%だと思っていても、21年になったら恐らく80%くらいになる。20%は大きい。20%だと、どこかのプレーでガクっていくことがあるからね」と話していた。

もちろん恩師は「桃田なら乗り越えてくれると思っています」と期待を寄せていたのだが…この日のゲームは、伏兵相手にその20%の部分がもろに出た。〝予言〟通りの結果となったのだ。

想像を上回る相手の強打を受けた桃田は「流れを止められなくなってしまった」と唇をかんだが、3年後には24年パリ五輪が控えている。吉川氏は「パリまで心配していない」と語っていただけに、五輪の借りは五輪で返すしかない。

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