【東京五輪】ベラルーシ女子選手亡命で家族を心配する声も 「彼女に近い人間は国家の標的」

ツィマノウスカヤ(ロイター)

東京五輪陸上女子ベラルーシ代表のクリスツィナ・ツィマノウスカヤ(24)がチーム側による強制帰国を拒否して亡命を申請した騒動が波紋を広げ続けている。

ツィマノウスカヤは7月30日に女子100メートル予選に出場し、2日の200メートル予選にも出場予定だった。しかし、経験がない1600メートルリレーへの出場を一方的に命じられコーチを批判。代表チームから帰国命令を受けたが「帰国すれば投獄されるかもしれない」と拒否し、ポーランドに亡命を申請して人道的査証(ビザ)の発給を受けた。

欧州連合(EU)はこの問題について、アレクサンドロ・ルカシェンコ大統領の「残忍な抑圧」のさらなる証拠であると非難。同政権は反体制派への弾圧が悪名高く、国民の基本的人権が守られない独裁政権と批判を受けている。

ポーランドの当局者はツィマノウスカヤが希望するのであれば、同国で陸上キャリアを続けることができると明かしている。一方で世界的騒動に発展したことで、ツィマノウスカヤさんの家族を心配する声も各方面からあがっている。

すでに夫のズダネービッチさんはベラルーシを脱出したという報道もある。英紙ガーディアンによれば夫婦はワルシャワで再会できる可能性が高く、「考えるまでもなく決心した」と語っている。

しかし、祖母と両親はクリマヴィチ地区に残っており、警察が訪問したと報じられているという。同紙は「彼女と彼女に近い人間は、ベラルーシ国家の標的であり続けるだろう」としている。

ベラルーシ政府は6月に反体制派ジャーナリストのロマン・プロタセビッチ氏が搭乗した旅客機を緊急着陸させたうえで拘束するなど、その強権ぶりが批判されたばかり。東京五輪を舞台に起きた亡命騒動は、今後も世界中から注目を集めそうだ。

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