長崎の労働運動の軌跡を後世に 三菱長船分会が75年史刊行

「三菱長崎造船労働組合75年史」を刊行した編さん委員ら=長崎市浜口町、三菱重工支部長船分会

 長崎市の三菱重工業長崎造船所での労働運動の軌跡をまとめた「三菱長崎造船労働組合75年史」が刊行された。第2次世界大戦後、経済成長の一翼を懸命に担う傍ら、組合分裂の混乱、労働災害防止に向けた運動を詳細に記録した。編さん委員は「長崎の労働運動の戦後史として、後世に生かしてほしい」としている。
 刊行したのは、全日本造船機械労働組合三菱重工支部長崎造船分会(長船分会)。錦戸淑宏さん(77)ら編さん委員6人が2017年から執筆に入り、20年8月に完成した。「三菱長崎造船労働組合史(10年史)」(1958年刊)と「三菱重工支部40年史」(88年刊)をベースに、その後の活動と資料を加えた。
 長崎造船所が創業した明治期からの前史にはじまり、終戦直後の組合結成や65年の組合分裂を経て、労働者の命と権利を守る闘いを全7部に分けて執筆。職場新聞などを収めた資料編も充実させた。
 編さん委員の藤原春光さん(82)は▽臨時工廃止と常時雇用制度の実現▽じん肺救済訴訟と補償制度の獲得▽組合分裂後の賃金差別や労働環境の改善要求▽過労問題の支援-を長船分会の功績に挙げ、「職場の要求をどう実現するか、という思いで続けてきた」と振り返る。
 分裂前、約1万2300人だった組合員は65年、約3千人が長船分会に残ったが、労使協調路線を目指した組合員は別の組合を設立。その後、長船分会の組合員は減少を続け、昨年春、現職組合員2人が退職し、現場で働く組合員はゼロになった。この間、退職した組合員が応援に入る形で活動を支えてきた。
 植田亘一さん(89)は「労組の発展を通して日本の資本主義が進展する過程が見えてきた。労働運動の歴史について、これからを生きる人たちへのメッセージとして残したかった」と話す。
 A4判、254ページ。関係者や公立図書館などに寄贈した。

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