東京五輪 陸上 女子1万メートル 廣中 理想像に近づいたレース

 5日前に5000メートルの日本記録を樹立して臨んだ1万メートル。廣中はこの日も世界を相手に果敢に挑み、自己ベストを約11秒更新する31分0秒71で7位入賞を果たした。楽しんで走り切った25周。「初めての五輪で不安が大きかったけれど、いろんな方のサポートや応援のおかげで入賞できた」。ゴール後、笑顔で感謝の日の丸を掲げた。
 1万メートルの初レースは今年4月。2レース目となった5月の日本選手権で五輪切符をつかみ、3レース目でこの世界最高峰の舞台に立った。当然、経験値は低いが、今回もスタートから先頭に立ってペースメーク。2500メートルすぎまで世界の強豪たちを引っ張った。
 その後、後続に吸収され、4500メートル付近で先頭集団から離れたが、2日の5000メートル決勝と同様にトレードマークの帽子を脱いで気合を入れ直した。「一人ずつでもいいから、前を狙おう」。9番手を死守して9000メートル手前で1人、ラスト150メートルでさらに1人をかわした。
 「一つの通過点になれば」と臨んだ初めての五輪は、大きな飛躍の舞台になった。9日間で計3レースをこなし、本命の5000メートルは決勝進出と14分52秒84の日本新をマーク。この日の1万メートルも、現時点で納得のいく走りができた。
 「去年にはなかった積極性が、この舞台で生まれたのが一番の収穫」。自国開催の五輪で結果を出した20歳は、自らの理想像である「自分の走りでいろんな人に勇気や感動を届けられる選手」に、ぐっと近づいた。

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