初優勝まで残り3分、ガス欠に泣いたMSR。土壇場逆転の31号車キャデラックが連勝/IMSA第8戦

 8月8日、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第8戦がアメリカ、ウィスコンシン州のロード・アメリカで行われ、ウィレン・エンジニアリング・レーシング(アクション・エクスプレス・レーシング)の31号車キャデラックDPi-V.R(フェリペ・ナッセ/ピポ・デラーニ組)が勝利を収めた。

 この週末に2022年のシーズンカレンダーが発表された北米スポーツカーシリーズは、GTカーのみが参加した前戦ライムロック・パークを経て、2戦ぶりに5クラス混走でのイベントを迎えた。

 伝統あるオールドサーキットでの予選は7日、ドライ路面からウエットに移り変わるなかで実施され、アーロン・テリッツ駆る14号車レクサスRC F GT3(バッサー・サリバン)が総合トップタイムとなる2分07秒195をマーク。しかし、決勝のスターティンググリッドは規定に従いDPi、LMP2、LMP3、GTLM、GTDの順に置き換えられ、DPi/LMP2クラス予選で最速となった31号車キャデラックが隊列の先頭につけた。

 雨中の予選から一転しドライコンディションで迎えた決勝は、その31号車キャデラックが2度のフルコース・コーションが導入されたレース序盤から首位の座を守る展開に。元F1ドライバーのナッセ駆る同車の後方には10号車アキュラARX-05(ウェイン・ティラー・レーシング)と55号車マツダRT24-P(マツダ・モータースポーツ)が続いていく。

■足りなかった3周分の燃料

 展開に変化が訪れたのはレース開始から1時間20分を過ぎた頃だ。DPiクラス2回目のルーティンピットタイミングで、他車と異なるストラテジーを採っていた60号車アキュラがレースリーダーに躍り出る。

 2冠王者デイン・キャメロンがドライブするピンク×ブラックカラーのアキュラは、デラーニに引き継がれた31号車キャデラックを僅差で抑えながら約30分にわたって首位をキープ。スタートから1時間53分の段階で、他の上位陣に先んじてピットに入った。その3周後に31号車や55号車マツダ、翌周には3番手につける10号車アキュラも最後のピットストップを行う。

“ラストストップ”を終えての順位はふたたび60号車が首位、31号車キャデラックが2番手で、3番手を10号車アキュラと55号車マツダが争うかたちに。上位2台の差は10秒前後、終盤に入ってもこの状況は変わらず60号車の逆転勝利で決着すると思われた。

 しかし、レース時間残り3分半というところで首位を走るキャメロンがピットに向かう。60号車はスプラッシュ・アンド・ゴーを行いコースに復帰するも4番手に後退してしまう。これで31号車キャデラックが土壇場で首位に返り咲く。デラーニは後方から55号車マツダが近づいてきていたが、これを1.594秒差で退けトップチェッカー。第6戦ワトキンス・グレン240に続く“連勝”を飾った。

2勝目を意味する2枚目のステッカーをマシンに貼り付けるウィレン・エンジニアリング・レーシングのピポ・デラーニ(手前)とフェリペ・ナッセ
レース残り時間3分半で給油のためピットに入った60号車アキュラARX-05
レース終了の約10分前、44号車アキュラNSX GT3 Evo(マグナス・ウィズ・アークエンジェル)の左リヤタイヤが脱落するアクシデントが発生したが、待避所に逃れたためコーションが出なかった。ここでコーションが出ていれば60号車の燃料は足りていた可能性も。

■GTLMクラスでは燃費走行が実を結ぶ

 3位は01号車キャデラックDPi-V.R(キャデラック・チップ・ガナッシ・レーシング)、4位にはマツダとのバトルで左リヤタイヤがパンクして遅れた10号車アキュラが入った。今季初優勝が目前に迫っていた60号車はファイナルラップで10号車にも抜かれ総合5位でレースを終えている。

 LMP2クラスは中盤以降、レースの主導権を握った18号車オレカ07・ギブソン(エラ・モータースポーツ)がクラス最後尾からの逆転優勝を果たした。LMP3クラスでは54号車リジェJS P320・ニッサン(コア・オートスポーツ)がウイナーに。
 
 GTLMクラスは最終スティントに燃費走行を実施し、60分以上のロングスティントとしてコルベット勢に対してアドバンテージを築いた79号車ポルシェ911 RSR-19(ウェザーテック・レーシング)が逆転勝利。セブリング12時間以来の2勝目をマークした。コルベット・レーシングは、ポールポジションを獲得していた3号車シボレー・コルベットC8.Rがクラス2位、僚友4号車コルベットC8.Rがクラス3位でチェッカーを受けている。

 GTDはレース序盤のコーション明けにトップを奪った9号車ポルシェ911 GT3 R(パフ・モータースポーツ)が中盤から終盤にかけてリーダーとなり、そのままトップでチェッカーを受けてクラス優勝を果たしている。2位はBMW M6 GT3(ターナー・モータースポーツ)、3位には16号車ポルシェ911 GT3 R(ライト・モータースポーツ)が入り、ポールシッターの14号レクサスはクラス5位。僚友12号車レクサスが同6位で続いた。

 この第8戦ロード・アメリカからシーズン終盤戦に入ったシリーズの次戦第9戦は9月12日、カリフォルニア州のウェザーテック・レースウェイ・ラグナ・セカで行われる。

総合2位でフィニッシュした55号車マツダRT24-P(マツダ・モータースポーツ)
LMP3クラスウイナーとなった54号車リジェJS P320・ニッサン(コア・オートスポーツ)
LMP2クラスを制した18号車オレカ07・ギブソン(エラ・モータースポーツ)
コルベット・レーシングのシボレー・コルベットC8.R
第2戦セブリング以来の2勝目を飾ったウェザーテック・レーシングのクーパー・マクニール(左)とマット・キャンベル(右)
GTDクラスで優勝した9号車ポルシェ911 GT3 R(パフ・モータースポーツ)

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