「平和への誓い」読み上げた岡さん まだ話すべきことある

「平和への誓い」を読み上げた岡さん=平和公園

 被爆者代表として「平和への誓い」を力強く読み上げた岡信子さん(92)=長崎市住吉町=。大けがを負いながら救護に当たった過酷な被爆の記憶は、思い出したくなくてあまり語ってこなかった。「読み始めて被爆者の姿が頭に浮かび、涙が出そうになった。訴えは伝わったと思う」
 長崎純心高等女学校を卒業後、大阪の看護専門学校に通学。16歳だった。長崎に帰省し、あの日、爆心地から1.8キロの長崎市東北郷(現在の住吉町)の実家で被爆。左半身にガラス片が無数に突き刺さった。
 3日後に日赤長崎県支部から召集があり、新興善国民学校の救護所に動員された。続々と被爆者が運び込まれ、救護所はいっぱいに。治療らしいことは何もできなかったが、傷口からウジがわいた人に塩水をかけ、ウジをはしや手で取ってあげた。死者は戸板で運動場に運ばれ、トラックに投げ入れられた。
 両手で内臓を抱えて立つ男性、母親と首がちぎれた乳飲み子-。行方不明の父を捜す過程で目撃したのは原爆被害のすさまじさだった。貧しい中、楽しいこともあった戦時の暮らし。「原爆はそれさえも奪い去ってしまった」
 壇上では、核兵器禁止条約が発効したことにも言及。「命ある限り語り継ぎ、核兵器廃絶と平和を訴え続けていくことを誓います」と表明した。
 岡さんは「今日でおしまいではなく、まだ話しておくべきことがある。原爆がどういうものか、若い人たちに伝えていきたい」と決意を語った。

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