東京五輪 長崎県勢 総評 過去最多11人が躍動 柔道 永瀬、ソフトボール 藤田「金」

 コロナ禍による1年の延期を経て、8日に全日程を終えた東京五輪。長崎県勢は過去最多となる11人が大舞台で躍動した。柔道男子の永瀬貴規(旭化成、長崎市出身)は、81キロ級で日本勢21年ぶりの金メダル、新採用の混合団体で銀メダルを獲得。ソフトボールの藤田倭(ビックカメラ高崎、佐世保市出身)は、2008年北京大会に続いて金メダルに輝いた日本を投打で引っ張った。

■4人が入賞

 長崎県スポーツ界の歴史に3個のメダルを加えた永瀬、藤田のほかの入賞者は2人。サッカー男子の吉田麻也(サンプドリア、長崎市出身)は、日本の主将として12年ロンドン大会以来となる4位に導いた。陸上の廣中璃梨佳(日本郵政グループ、大村市出身)は、1万メートルで日本勢25年ぶりの入賞となる7位と健闘。5000メートルは9位だったものの、14分52秒84の日本記録を樹立した。
 過去の五輪同様、今大会も金メダルが有力視されていた選手に「まさか」の事態が起こった。世界の体操界をけん引してきた内村航平(ジョイカル、諫早市出身)も、その一人。種目別鉄棒に絞った自身4度目の挑戦は、予選で落下して早すぎる結末を迎えた。
 だが、体操界全体の発展を願う32歳は、そこからが違った。結果を真摯(しんし)に受け止めると同時に、若い力の台頭をしっかりと、頼もしそうに見守った。「今後の日本、世界の体操界を引っ張っていける選手がそろっている」。「キング」は最後まで「キング」だった。

■経験を積む

 団体競技の県勢は、藤田、吉田のほか、バスケットボール男子の田中大貴(A東京、雲仙市出身)、九州文化学園高卒でバレーボール女子の小幡真子(JT、熊本県出身)、水球男子のコップ晴紀イラリオ(DSKドラゴンズ、西彼時津町出身)の3人が、それぞれ12人しかメンバー入りできない代表の主力として出場。結果はいずれも1次リーグ敗退だったが、世界での現在地を知ることができた。水球男子は37年ぶりの1勝という収穫もあった。
 カヌー男子で33歳の水本圭治(チョープロ、岩手県出身)と射撃男子で37歳の松本崇志(自衛隊、島原市出身)は、4度目の挑戦で五輪の夢舞台に立った。水本はカヤックフォア500メートルで準々決勝敗退。松本もライフル3姿勢、エアライフルともに決勝へ進めなかったが、2人のベテランが「五輪でしかできない経験ができた」と早くも先を見据えている姿は印象に残った。
 柔道女子52キロ級の深見利佐子(筑波大大学院、佐世保市出身)は、父の祖国であるタイ代表として出場した。競技人生の集大成と決めて臨んだ五輪。結果は初戦敗退だったが、最高の大会で精いっぱい戦い抜いて競技生活を終えた。

■次は3年後

 悲願の金メダルをつかんだ永瀬、五輪通算試合出場数を史上最多記録に並ぶ「13」に伸ばした吉田-。各競技の「顔」と言える彼らであっても、初出場した時の五輪は満足できる内容ではなかった。永瀬は16年リオデジャネイロ大会の銅メダル、吉田は08年北京大会の1次リーグ3連敗の悔しさを、その後の成長の糧にしていた。
 この2人に限らず、アスリートにとって五輪の経験は何物にも代え難い財産となる。特に今回は緊急事態宣言下で開かれた五輪。スポーツができることのありがたさを肌で知った経験も大きかったはずだ。
 次回の夏季五輪は3年後。大会開催の間隔が従来の4年よりも短い分、今回の多くの代表だけではなく、あと一歩のところで出場を逃した代表候補たちも競技を続ける可能性が高い。これから出てくる若手から経験豊富なベテランまでによる代表争いは熾烈(しれつ)を極めるだろう。その中で県勢がどれだけ台頭するか。1人でも多くの選手が日の丸をつけることを願っている。

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