【NEC軽井沢72】「鬼メンタル」で注目も 稲見萌寧に危惧される〝渋野症候群〟

〝鬼メンタル〟の持ち主だが

最強女子プロゴルファーへの条件とは――。国内女子ゴルフの「NEC軽井沢72」初日(13日、長野・軽井沢72G北C=パー72)、東京五輪ゴルフ女子で銀メダルを獲得した稲見萌寧(22=都築電気)は2アンダーの16位につけた。五輪の活躍で大舞台でも物おじしない〝鬼メンタル〟が注目を集めているが、今後さらに大成するためには多くの選手が苦しんだある課題の克服が必要だ。

稲見が銀メダリストとして初めて迎えたツアーの初日。降りしきる雨と気温16度の厳しい条件に苦しめられてスコアを伸ばし切れなかった。「けっこう雨がひどくて、ティーショットも全然ランが出ないのでセカンドの距離が残ってしまって、ロングアイアンとかが今週うまくいってないので、そのへんでチャンスが少なかったという感じです」。それでもノーボギーだったのはさすがだ。

本人はすでに銀メダルの余韻から切り替えているが、大舞台で「緊張」という言葉を一切口にせず、伸び伸びプレーしていた姿がゴルフ界で話題となっている。ツアー関係者によると、米ツアーで賞金女王に輝いた〝世界のアヤコ〟こと岡本綾子(70)は稲見のメンタルについて「緊張しない人なんていない。まだ経験が少ないからそうなるのではないか」と解説していたという。怖いもの知らずが強メンタルの源というわけだ。

しかしプロキャリアは成功体験ばかりではない。経験を積めば失敗も増えていくため、それがプレーに対する恐怖を生み、いつしか怖いもの知らずではいられなくなる。

顕著な例が渋野日向子(サントリー)だ。初の海外メジャー挑戦となった2019年「全英女子オープン」では攻めの姿勢を貫いて勝利をつかんだが、その後は持ち味だった思い切りのよさを徐々に失い、現在はスイング面を含めて試行錯誤している。

そんな状況を踏まえて、あるベテラン男子プロは「渋野さんはゴルフの重みを本当に知る前に(『全英女子』に)勝ったという印象があるけど、今はそれを知ってなかなかうまくいっていない。稲見さんの銀メダルもそういう部分があったと思うし、これからもこのメンタルを継続できるかは、すごく気になる。もしこのメンタルが変わらず、さらにうまくなれば、本当にすごい選手になる」と指摘。岡本も同じ思いを抱いているのかもしれない。

稲見は国内ツアーを主戦場とする考えに変わりはないが、今後参戦する可能性のある海外メジャーや2024年パリ五輪優勝へ向けて〝渋野症候群〟とどう向き合うかがカギを握りそうだ。

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