上越は今〈6〉佐渡汽船「小木―直江津航路」あかね売却、ぎんが就航 補助金の返還要求 航路維持へ財政支援

 佐渡汽船(本社・佐渡市)の小木―直江津航路では、高速カーフェリー「あかね」が売却された一方で、ジェットフォイル「ぎんが」が就航した。厳しい経営状況が続き、債務超過に陥っている同社の航路収支改善を目的とした就航船舶変更をめぐり、「あかね」建造に当たり補助金を交付した上越市も対応策を講じている。

佐渡汽船、県、上越市、佐渡市の4者のトップ会議で就航船舶変更を合意(昨年10月、県庁)

 「あかね」は平成27年4月に小木―直江津航路に就航したが、昨年7月に同社の経営改善策の一環として売却、ジェットフォイルへの置き換え方針が示され、同10月に同社、県、上越市、佐渡市の4者のトップ会議で合意。ジェットフォイルは、新潟―両津航路に就航していた「ぎんが」を転用することになった。

 「ぎんが」は今年4月に就航。同29日には直江津港で第1便出港を見送るセレモニーが行われ、地元小学生の太鼓演奏などで新たな船出を祝った。一方の「あかね」は6月、スペインのフェリー運航会社に約30億5000万円での売却が決まり、7月に引き渡された。

新たに就航した「ぎんが」(4月29日、直江津港)
スペインのフェリー運航会社に売却された「あかね」(7月14日、直江津港)

 約58億円が投じられた「あかね」建造に対し、上越市は北陸新幹線開業に合わせて小木―直江津航路の利用促進を図ろうと,約2億5000万円の補助金を交付していたが、売却決定を受けて返還とその金額を検討。佐渡汽船が「あかね」償却期間としていた20年のうち実際に就航、減価償却された6年を除く14年分の補助金の残存額となる約1億7590万円の返還を求めることにした。

 「あかね」売却決定について村山秀幸市長は、「小木―直江津航路の活性化を期待して導入された『あかね』が6年で売却されることになったのは残念だが、佐渡汽船の財務状況が改善することを期待し、同社には経営改善を着実に進めてほしい」とコメントを出した。

支援額2億4000万円上限に9月市議会へ

 上越市は補助金返還要求の一方で、小木―直江津航路の維持に向け約2億4000万円を上限に財政支援を行う方針。市議会9月定例会に予算案を提案する見通しだ。

 本年度のコロナ禍の影響による同航路の収入減少額を対象にした財政支援で、同社の年間計画と輸送実績の差により算出。同航路の今期の運行が終了する10月末までの実績に基づいて金額を精査し、11月以降に交付する考えで、本年度限りの補助金と位置付けている。

 同社では経営改善のための各種取り組みの他、今期における金融機関からの支援や第三者出資などによる資本増強を検討。そうした中で、同市による財政支援を要望していた。(おわり)

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