パラリンピック開幕

 「迷惑を掛けてもいいんじゃないか? もちろん、嫌がらせの迷惑はいかん。しかし、ぎりぎりの迷惑は掛けてもいいんじゃないか」「もっとどんどん外を歩いて、迷惑を掛けて…いや、少しの手伝いを迷惑だと考える方がおかしい、どんどん頼めばいいんだ」▲障害のある人の姿をあちこちで見掛けるようになれば、きっと周りの人間の対応も変わってくる、迷惑を掛けることを恐れるな、胸を張れ-車いすの青年に向かって鶴田浩二さんの静かな言葉が続く▲時々シナリオを読み返し、そのたびに問題提起の先駆性に驚いている。山田太一さん脚本のドラマシリーズ「男たちの旅路」の一編「車輪の一歩」が放送されたのは1979年。「バリアフリー」という単語さえ、まだ一般的な言葉ではなかった時代だ▲山田さんの一歩から40年と少し。社会はどこまで前に進むことができただろう。障害者スポーツの祭典、パラリンピックが東京で開幕した▲13日間の熱戦。いつものスポーツ観戦と同じ気持ちで画面の前に座れるだろうか。もし、ためらいや戸惑いを感じるとしたら、それは自然な感情なのだろうか、それとも何かの意識の表れなのか。その意識は変わるべきなのか▲短い言葉の答えを今は思いつかない。ただ、考えを巡らせることは止めずにいたい。(智)

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