「投資は個別株が多め」バランス見直しのポイントや2024年「新NISA」の活用方法は?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、58歳・士業事務所勤務の方。生活費を抑えて貯金や投資に回しているけれど、あまり貯まらないという相談者。投資の方針で見直す点は? FPの横山光昭氏がお答えします。

間もなく60歳になる単身者です。老後に向け、貯金額や投資額がこれでよいのかが気になっています。老後資金は足りているのでしょうか。

貯金は毎月積み立て、投資は証券会社に聞いてしています。生活費も極力かけないようにし、貯めたり投資しているのですが、その割に貯まっていないような気もしています。

士業事務所で働いており、社会保険はありません。そのため、自分で国民健康保険、国民年金を払っており、住民税も自分で納付しています。趣味は観劇で、その費用はボーナスから予算して準備しています。それ以外には特に大きな支出もなく、やりくり自体には問題は感じないのですが……。

インターネットは得意ではないため、パソコンは持っていません。携帯電話も昔からのガラケーなので、ネットでの取引はできません。今後に向け、何か良いアドバイスをお願いします。

【相談者プロフィール】

・58歳、士業事務員、独身

・手取り収入:月収26万3,000円、年間ボーナス約100万円

・貯蓄:預貯金320万円

・投資(NISAで保有):個別株480万円、投資信託90万円、金110万円

・退職金については不明

・毎月の支出の目安:22万3,000円

【支出の内訳】

・住居費(家賃+管理費):6万3,000 円

・食費(外食ほぼなし):2万8,000 円

・水道光熱費:9,000 円

・通信費:1万円

・生命保険料:8,000 円

・日用品代:4,000 円

・医療費:5,000 円

・教育費(料理教室): 5,000 円

・交通費:9,000 円

・被服費:4,000 円

・娯楽費:3,000 円

・その他:1万2,000 円

・国年国保、住民税:6万3,000円


横山:老後の見通しは、60歳以降の働き方、貯め方、退職金の有無等により大きく変わってくるかと思いますが、現状を改善するとより良くなるだろうと思える部分があります。それらをお伝えすることも含め、ご相談者の家計や資産について考えてみましょう。

家計状況はOK。資産の持ち方はやや不安

約26万円の収入があり、約22万円で生活できています。黒字の家計運営で、毎月4万円ほどは貯めることが可能な状況です。趣味への支出も、ボーナスを活用して、計画的にねん出しているということですから、非常に上手なやりくりをされていると感じます。

貯金も生活費の7.5か月分以上の「生活防衛資金」が準備できていますし、これから先の余剰金は全て投資に回していくとよいでしょう。その投資部分についてですが、商品の持ち方は今後変更していくほうが良いと感じました。

現在、保有資産の大部分が個別株です。個別株は投資信託と異なり、景気や指標に影響されるのではなく、その企業の業績により株価が動きますから、ハイリスクな投資といえます。これから労働時間や収入が減る年代に入るのですから、長期的な資産形成も考慮して、ローリスク・ローリターンでインフレに負けない投資をしていただきたいと思います。

また、インターネットでの取引ではないようですから、窓口で勧められた商品にそのまま投資した、ということはないでしょうか。窓口では、その金融機関が販売したい商品を勧められるケースもあり、ご相談者に適した商品が勧められているとは限りません。少しずつ投資信託への投資にシフトしていくほうが良いでしょう。

長期の資産形成には、つみたてNISAの活用も

NISAの活用自体は、悪くありません。非課税運用は上手に活用したいものです。

2024年には今のNISAは「新NISA」に変わります。新NISAは2階建て構造となり、1階は年間20万円を上限につみたてNISAの対象商品を積立で運用する部分、2階は年間102万円を上限に、今のNISAの対象商品から一部を除外した商品を投資できる部分となります。

この枠を新規で利用するには、1階のつみたて部分を利用してから2階を利用するという順が決められています。一方で、今のNISAを新NISAにロールオーバーすることもできます。その場合は2階から枠を使っていくというルールです。

ご相談者の場合、投資の内容の変更も検討いただきたいので、個別株は株価の良いときに売却を検討し、その分、投資信託への投資を増やすとよいかもしれません。しばらく使わないお金となるでしょうから、長期運用ができ、複利の恩恵を受けられるつみたてNISAの利用に変えてもよいでしょう。

今後は厚生年金に加入できる可能性も

今の士業事務所では国民健康保険、国民年金に自分で入り、料金を支払わなくてはいけないということでしたが、2022年10月以降、厚生年金に加入した働き方ができるかもしれません。

個人事務所では今まで、社会保険の適応事業所となっていませんでしたが、2022年10月から、5人以上の事務所は適応事業所となることになりました。ご相談者の働く事務所も該当するのであれば、厚生年金への加入が可能になります。

60歳目前に加入する年金が変わるのも不安に思われるかもしれませんが、年金の受給資格期間がある状況で、厚生年金に1か月でも加入すると、厚生年金の受給資格ができます。金額は多くないかもしれませんが、国民年金に厚生年金を上乗せして受給できるようになるのです。

厚生年金のある会社で働き続けられれば、70歳まで加入することができますので、場合によっては10年近く加入することができるかもしれません。そうして、年金受給額を増やすことができれば、老後の生活も心強いですよね。

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