「なぜ目の敵に」飲食業者ら悲鳴 まん延防止、長崎県初適用

まん延防止等重点措置の適用で休業や時短営業を余儀なくされ、明かりが消え閑散とする飲食店街=27日午後7時36分、長崎市船大工町

 新型コロナウイルス対策のまん延防止等重点措置が27日、長崎、佐世保両市に初めて適用された。酒類提供の終日自粛と午後8時までの時短営業が飲食店などに要請され、飲食業者らは「感染拡大のたび、つけが回ってくる」「感染防止の自覚を持つことが必要なのに」と悲痛な声を上げた。
 長崎市最大の繁華街、思案橋。適用期間終了の9月12日までの休業を知らせる貼り紙を入り口に貼った店が連なる。時短営業しているのは、ラーメン店などわずか。日が落ちると、人の姿は消え、街灯の明かりだけが通りを照らした。
 船大工町の「居酒屋割烹(かっぽう) 光田」は時短営業でしのいできたが、酒類提供の自粛を求められた今回、初めて休業を決断。店主の光田賢一さん(51)は「今回ばかりはどうしようもない。酒なしで開けていてもお客さんも来ないし、売り上げも望めないだろう」とあきらめ気味に話した。
 今回、要請に応じなければ店名公表などの罰則が、重くのしかかる。しかし、この1カ月間で発生した県内のクラスター(感染者集団)は行政や部活動などで相次ぎ、飲食店が起因した例は多くない。
 「(感染者が)100人を超し、仕方ないけど、そのたびに飲食業がなぜ目の敵にされるのか」と光田さん。「時短協力金も家賃などに充てたら残らず、ぎりぎりで回している」と支援の拡充を訴える。
 26日から昼営業に絞った新地町の「中華菜館 福壽」。黄醒博社長(69)は「夜は人通りが減り、経費もかかるので休むことにした。頑張るしかないが、限界に近い」とつぶやいた。
 繁華街を歩いていた市内の男性(95)は「酒がないのはさみしい」、自営業の男性(38)は「仕方ないが、感染防止へ一人一人の自覚ある行動がもっと必要」と話した。

 飲食店などと取引のある酒店なども苦しい状況。市内のある酒店は納入する飲食店のほとんどが休業。ホテルからの注文も途絶え、店の一角で営んでいた「角打ち」も休止した。コロナ禍前と比べ、売り上げは8割減。店主は「人が動かないから打つ手がない。ロックダウンなど厳しい対策をして、短期間で感染を抑え込んでほしい」と話す。
 市内の酒店を中心に約300店に酒類を卸す西九州酒類販売によると、昨年の売り上げはコロナ禍前の6割だったが、今年はさらに4割落ちた。光冨英造社長(69)は「酒を止めるだけでは駄目。ワクチン接種を若い世代に促すなど、他にもできることがあるのではないか」と行政に注文を付けた。


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