過疎地域の生活基盤を維持 「貨客混載」の実証実験 論議へ 平戸市など 9月1日 関係事業者と検討会

 総合建設コンサルタント大手、日本工営(東京)と長崎県平戸市は、民間公共交通事業者5社、宅配業者3社に呼び掛けて、貨客混載の実証実験実施に向けた論議を始める。公共交通機関の路線網の維持と宅配業者の配送効率化、労働環境改善やコスト縮減などを目指す。
 貨客混載は交通、宅配両事業者による論議が一般的で、物流サービスを都市部と同じように受けられる環境整備に向けて、自治体が加わるのは異例。
 日本工営などによると、過疎化が進む地方の公共交通路線は利用客が年々減少し、補助金なしで維持は難しい。一方、貨物取扱量はネット通販の普及などで増加傾向。過疎地域でも都市部と同じサービスを展開するため、宅配業者はコスト増が避けられないという。
 日本工営は、佐川急便や日本郵便、ヤマト運輸の宅配大手3社と、松浦鉄道、西肥自動車、生月自動車、ケイライン、大川陸運の交通5社に、貨客混載の実証実験を提案。乗客が少ない時間帯に運行する車両、船舶を貨物配送に活用する。
 宅配業者は交通業者に貨物配送の一部を委ねることでコストを縮減できるほか、トラック運転手の労働を軽減できる可能性がある。また、貨物配達のため、地域での雇用創出につながることも見込まれる。
 平戸市や関係事業者でつくる「平戸地域貨客混載検討会」を9月1日に開き、国土交通省九州運輸局もオブザーバー参加する。実証実験の実施時期は未定。
 日本工営は同市田平町の中瀬草原キャンプ場の再生を手掛けるなど平戸の活性化に寄与。国内外で公共交通網の維持、再編に携わっている。実証実験では、貨客混載のルール整備と事業者間の調整を担う。同社は「過疎地域の生活基盤を維持する手法の構築につながる」と意義を説明する。

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