【インタビュー】長崎大学病院産婦人科・三浦清徳教授 感染妊婦の医療体制 周産期センターで対応

感染した妊婦の受け入れ体制について話す三浦教授

 今月中旬、千葉県で新型コロナウイルスに感染していた妊婦の入院先が見つからず、自宅で出産した赤ちゃんが亡くなった。長崎県内で妊婦が感染した場合の医療体制はどうなっているのか。長崎大学病院産婦人科の三浦清徳教授がオンラインで取材に応じた。

 -千葉のケースをどう受け止めたか。
 千葉でも搬送・受け入れ体制はあったと思うが、陽性の妊婦が増え、医療の許容量を超えた結果だろう。

 -県内の医療体制はどうなっているのか。
 妊婦が検査で陽性となれば、かかりつけ産科医や保健所が長崎大学病院など県内4カ所の周産期母子医療センターに連絡し、センターが対応を判断する。
 中等症以上または軽症でもリスクが高い場合は、センターか分娩(ぶんべん)を扱う総合病院に入院する。重症者は長崎大学病院で受け入れる。県外搬送はしない。症状が軽い人も基本は看護師がいる宿泊療養施設に入る。幼い子どもがいるなど家庭の事情で自宅療養の場合もある。在宅で異常を感じれば、かかりつけ産科医にすぐに連絡してほしい。

 -在宅で陣痛があったり破水したりして救急搬送される場合、受け入れ医療機関がないという事態は起こらないのか。
 現時点では、県内の妊婦数を考慮しても受け入れ可能な状況なので、起こらないだろう。妊婦の容体が急変した場合は、長崎大学病院を中心にいずれかの周産期母子医療センターで受け入れる体制があり、安心してもらっていい。
 ただ感染がさらに拡大すると、受け入れ困難な状況になるかもしれない。そうならないためにもコロナの治療が済んだ後は、速やかにかかりつけ産科医や分娩を扱う総合病院に転院し、診てもらうという連携が重要だ。

 -感染した妊婦や胎児のリスクは。
 妊娠しているだけでリスクがあり、胎児の成長で子宮が大きくなると、母体が圧迫され呼吸器症状が出やすい。感染すると早産の可能性が上がる。重症化して低酸素状態になれば胎児への影響もあるだろう。ただ母体から胎児への感染リスクは極めて低い。

 -県内では感染した妊婦が出産したケースはどのくらいあるのか。
 今年の春の第4波までに23例。現在の第5波に入って増えており、家庭内感染が多い。妊婦だけでなく家族にもワクチンを接種してもらい、密を避ける行動など感染予防に努めてほしい。

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