「かんころ文化」残したい 完成まで約4年 にしむらかえさん 絵本出版

絵本「かんころもちと教会の島」を出版したにしむらさん=佐世保市役所

 長崎県東彼東彼杵町の絵本作家、にしむらかえさん(46)の作品「かんころもちと教会の島」が、月刊誌「たくさんのふしぎ」9月号として出版された。完成までに約4年。高齢化や過疎化で「存続の危機」にあるかんころ文化を残したいと新上五島町などに何度も足を運んで形にした。
 にしむらさんはニューヨークで絵本作家としてデビューし、執筆や挿絵の仕事をしている。夫の転勤で佐世保市に住居を構えていた2017年、長女(10)の好物であるかんころ餅が食べられなくなる可能性を耳にした。その後、かんころ餅が多く作られている新上五島町の生産者に話を聞く機会があり「伝統的なかんころ作りや島の人の日々の営みを記録したい」と絵本製作を決めた。
 にしむらさんと長女は、新上五島町や北松小値賀町などに約20回出向き、さまざまな年齢や職業の人たちの暮らしを取材。絵本はこうした体験を基に、かつて島の人たちの食を支え、今も受け継がれているかんころ文化を説明。祈りを中心とした島の人たちの生活や禁教期の潜伏キリシタンとかんころのつながりも紹介している。
 絵本が完成し、にしむらさんは「感無量。形になりほっとしている」と話した。購入は書店注文かインターネットで。770円。

© 株式会社長崎新聞社