【インタビュー】「長崎いのちの電話」古賀義理事長 社会的弱者 支える態勢を、コロナ禍 女性や学生にしわ寄せ

「生きづらさを抱えた社会的弱者を見守る態勢整備を」と語る古賀理事長=長崎市、長崎いのちの電話

 自殺予防を目的に電話相談を受け付ける長崎市の社会福祉法人「長崎いのちの電話」の理事長に6月就任した古賀義(ただし)さん(76)。日ごろ臨床心理士として病院でカウンセリングに当たるほか、妊娠や出産に関する悩みを抱える女性を支援する市民団体「県いのちを大切にする会」の代表も務める。新型コロナウイルス禍の心身への影響や求められる対策を聞いた。

 -コロナ禍の心身への影響について。
 当初は感染への不安を口にする高齢者が多かったが、ワクチン接種が進み、現在は以前ほど多くない。一方で長期化に伴って人と触れ合う機会が減り、特に1人暮らしのお年寄りが孤独や孤立感を深めている印象がある。自宅に閉じこもり、認知機能の低下も懸念される。離れて暮らす親族が2日に1回でも電話を掛けるなどコミュニケーションを取ることは非常に重要だ。

 -昨年の全国の統計では小中高生の自殺者数が過去最多で、女性の自殺者増も目立つ。
 男性優位の社会構造でコロナ禍により、雇用や経済的な問題など女性、特にひとり親家庭にしわ寄せがいっていることが背景にあると思われる。また学生は学業や進路などの悩みにコロナ禍による長期休校や外出自粛が重なり、目標や気力を失い、不登校や引きこもりにつながるケースもみられる。

 -どのような対策が必要か。
 代表を務める「県いのちを大切にする会」では妊娠や出産に関する悩みを持つ女性の相談に応じ、経済的事情を抱える妊婦を援助する募金活動をしている。県内には公的機関やNPO(民間非営利団体)など、さまざまな相談窓口がある。個人情報の問題はあるが、ばらばらに動くのではなく、ネットワークを強化し、行政が把握した情報を民間と共有しながら、生きづらさを抱えた社会的弱者を見守り、支援する態勢を整えるべきだ。

 -新学期が始まるが、悩みを抱えた子どもたちにメッセージを。
 1人で抱え込まずに、相談してほしい。どうしても行けない時は、無理に学校に行く必要はない。自分が何をしたいのか、自分に合った目標を自分の意思で決めることが大事で、その結果として学校に行けばいい。


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