雲仙・小浜温泉街『おたっしゃん湯』 3代目へ引き継ぎ 1日営業再開 

補修工事を終えた「おたっしゃん湯」=雲仙市小浜町

 長崎県雲仙市小浜町の小浜温泉街で「おたっしゃん湯」の愛称で長年親しまれている民営大衆浴場「脇浜温泉浴場」が、約2カ月間の補修工事を終え、9月1日に営業再開する。2代目店主の宅島久男さんが3年前に92歳で亡くなって以降、妻の美代子さん(89)が支えてきたが、長男の久博さん(60)へと代替わりする準備に入る。
 源泉かけ流しの同浴場は、1937年に久男さんの父常雄さんら親族が共同で開業。親族の渡部タシさんが近くで商店を開いていたことから「おタシさんの湯=おたっしゃん湯」と呼ばれるようになったという。木造平屋で、外観や木製の衣類入れが並ぶ脱衣所が開業当時の姿を残し、2010年に県の「まちづくり景観資産」に登録された。
 この3年間は美代子さんが番台に座り続けてきたが、長男の久博さんが今年3月末で福岡県の勤め先を定年退職し、浴場を引き継ぐことになり約10年ぶりの大補修を決めた。6月下旬から休業し、前回の改修を手掛けたシロタニ木工(同町)が工事を担当。少し傾いていた建物を柱で補強し、傷んだ天井をやり替え、外壁の板と浴室内部の壁、天井を塗り直した。老朽化したコンプレッサー(源泉をくみ上げる装置)も新品と交換した。
 「営業再開を楽しみにしてくれている常連さんのために」と、張り切って浴室を掃除する美代子さん。11月ごろに久博さんが引っ越してくる予定で、しばらくは2人で交代しながら番台に座り、ゆっくりと代替わりしていく。
 美代子さんは「息子とけんかしないように辛抱するだけですよ」と照れ隠ししながら、「主人(久男さん)も喜んでいるはず」と顔をほころばせている。
 営業時間は午前5時から午後9時。年中無休。入浴料金は中学生以上200円、小学生100円、幼児50円。

「おたっしゃん湯」の営業再開に向け浴室の床を磨く宅島美代子さん=雲仙市小浜町

© 株式会社長崎新聞社