日本は165か国中何位?世界の2021年SDGs通信簿が公開、16項目の進捗度も

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は8月9日、産業革命前と比べた世界の気温上昇が2021~2040年に1.5度に達するとの予測を公表しました。2018年の報告書で想定した2030~2052年より10年ほど早まりました。

IPCCは人間活動の温暖化への影響は「疑う余地がない」と断定。産業革命前は半世紀に1回だった極端な猛暑は、1.5度の気温上昇で9倍、2度で14倍に増えると予測しています。強烈な熱帯低気圧の発生率は1.5度の上昇で1.5倍、農業に被害を及ぼす干ばつの発生率は2倍に拡大する予想です。

気候変動リスクをきちんと受け止め、対策を急ぐ必要性が高まっています。10月末からの第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の議論への注目度が増しています。


世界のSDGs達成度の通信簿

国連のシンクタンクが2015年から毎年公表している「The SDGs Index & Dashboards」で世界全体のSDGs(持続可能な目標)達成度を見ても、全体的に改善基調で推移する中、環境関連(目標12-15)は遅々として進捗していません。

社会や経済面では、3)保健や8)成長・雇用に関する基礎的サービスやインフラが改善していましたが、コロナ禍における失業率や貧困率の上昇により、足元ではやや失速しています。一方、経済面の9)イノベーションは過去6年間で飛躍的に改善しました。

国別にSDGsインデックススコアを見ますと、日本は79.8で世界18位/165ヵ国。フィンランド(1位:同85.9)やドイツ(4位:同82.5)、英国(17位:同80.0)など欧州勢が上位を占める中、米国(32位:76.0)を上回る上位につけました。

もっとも、日本が達成できているSDGs目標は、4)教育、9)イノベーション、16)平和の3項目に留まり、環境関連(目標13-15)は目標達成に程遠いと評価されています。今後、一層の取り組みが必要とされるでしょう。

世界のESG投資は増加基調

こうしたSDGsの目標達成に向けた取り組みを資金面から後押しする動きが続いています。世界のESG投資(環境[E]・社会[S]・ガバナンス[G]を重視して対象を選ぶ投資)額は増加基調にあり、2020年年初に5つの主要市場(欧・米・加・豪NZ・日)で35.3兆米ドルに拡大。その伸び率は過去2年間(2018~2020年)で15%増、過去4年間(2016~2020年)で55%増に達しました。

また、世界のESG投資が全運用資産に占める割合は、2016年の27.6%から2018年の33.4%、2020年の35.9%へと拡大しました。

欧米が主導、個人投資家の参入増

ESG投資の先導役は米国と欧州で、2020年に世界全体の80%以上を占めています。米国のESG投資額は2020年に17.1兆米ドルと2年前から42%増加。一方、欧州では2020年に投資残高が減少しましたが、EUの法律で持続可能な投資の定義が厳格化されたことが影響しています。いわゆる「名ばかり」ESG投資の排除が進んでいる可能性が高いでしょう。

世界的に機関投資家(年金基金、大学、保険会社など)主導でESG投資が拡大する中、個人投資家の関心も着実に高まっています。ESG投資全体に占めるその割合は2012年の11%から2018年に25%へと拡大し、2020年も同水準を維持しています。

日本のESG投資資産は2020年に2.9兆米ドルと過去4年間で6倍、過去2年間では34%増加。運用資産全体に占める割合は、2016年の3.4%から2020年の24.3%へと急拡大しました。

近年のESG投資増の背景には、SDGs債の発行増が一役買っているでしょう。債券と比較すると、株式関連のESG投資商品が少なかったことから、ESG投資全体に占める日本株・外国株のシェアが低下した模様です。

今後を見通すと、気候変動などSDGs課題の解決に向けた資金ニーズは一層高まる見通しです。日本でもESG投資ファンドは昨年辺りから増え出しています。海外の活発なESG投資市場を見れば、日本でもESG投資が拡大する余地は大きいでしょう。

<文:チーフESGストラテジスト 山田 雪乃>

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