松浦高 普通科から「地域科学科」に 来年度改編 PR、課題解決に奮闘

市内の中学校で保護者に「地域科学科」について説明する松浦高の小野下校長=松浦市立御厨中

 長崎県松浦市の県立松浦高(小野下和宏校長、237人)の「普通科」(定員80人)が来年度、「地域科学科」(同)に改編されることについて、志願する中学生や保護者、同窓生らから「普通科でないと進学に不利になるのでは」「地域科学科で何を学ぶのか」などといった不安や懸念の声が上がっている。
 同校は市内唯一の高校で今年創立60周年を迎えた。2017年度からは市と協働で、普通科と商業科(定員40人)の2年生を対象に「まつナビ」を実践。高校生たちが地域の課題を分析し、解決策などを考察、提言する教育プログラムで、学生にも地域住民にも好評だ。20年度からは文部科学省の「地域との協働による高校教育改革推進事業(地域魅力化型)」(3カ年事業)に採択され、プログラムを高校3年間を通した内容に拡充。そのユニークな試みは全国的に注目を集めている。
 県教委が、同校の学科改編を発表したのは6月。直後から小野下校長自ら市内の7中学校に出向き、生徒や保護者向けの説明会を開催してきた。
 「地域科学科」への改編は文科省や県教委が進める普通科改革に沿ったもの。進路希望に応じた普通科の学習内容に加え、まつナビでの学習をさらに深め、社会の変化に対応できる課題発見力、論理的思考力、コミュニケーション力、ふるさとを大切にする姿勢を伸ばす「シン(深・伸・進)化した新たな普通科」を目指す-としている。
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 ところが、こうした狙いとは裏腹に、7月に県教委が発表した公立高校進学希望状況第1回調査で「地域科学科」の進学希望者は42人(0.53倍)と、定員を大きく下回った。昨年同期の「普通科」の76人(0.95倍)と比べても大幅減。「進学を考え、普通科がある市外の高校に進路を変えた」。保護者の間からはそんな声も漏れる。
 同校PTA(川下高広会長)なども進学希望者の減少に危機感を抱いている。新設学科のPR動画を制作したり、看板を設置したりするなど周知活動に懸命。一方、同校に下宿費補助や資格試験の受験料など年間約1500万円を助成している市も気をもむ。定員割れが続けば、将来的に統廃合の対象になりかねないからだ。市は、市報9月号で同校への支援内容やまつナビの取り組み、地域科学科への改編に関する特集を4ページにわたって掲載。市民に理解を求め、進学希望者の確保をバックアップする。
 同校には市内だけでなく隣接する佐世保市吉井、世知原地区、平戸市からの進学者も多い。小野下校長は「9月以降も市内や周辺地区の中学校で説明会や地区ごとの相談会を開き、地域科学科の教育内容を丁寧に説明し、理解を深めるよう努めていく」と話した。

PTAなどが設置した「地域科学科」への改編をPRする看板=松浦市志佐町、松浦高

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