2022年度に廃止される「年金手帳」、そもそもの役割や持っている手帳はどうなる?今後の対応は

公的年金の加入者に国から配られる年金手帳。年金手帳には、大切な自分の年金に関する情報が記載されているのですが……実は、2022年4月に廃止されることになりました。すでに年金手帳を持っている方は、今後どうなるのでしょうか。

また、2022年4月以降に公的年金に加入する方はどうするのでしょうか。今回は、年金手帳廃止の背景と、今後の対応について紹介します。


年金手帳ってどんなもの? 何が書いてある?

年金手帳は、国民年金や厚生年金の加入者(被保険者)であることを示すために交付される書類です。国民年金には、原則として日本に住む20歳〜60歳までのすべての方が加入します。また厚生年金には、会社員や公務員が加入します。1997年1月以降に公的年金に加入した方は青色の表紙、それ以前に公的年金に加入した方にはオレンジ色や茶色、水色などの表紙の年金手帳が交付されています。

20歳の誕生日を迎えるころになると、日本年金機構から「国民年金被保険者資格取得届」が届きます。これに必要事項を記入して提出すると、後日年金手帳が送られてきます。10代で就職した方の場合は、それより前に勤務先で厚生年金の加入手続きを行うことで、勤務先経由で年金手帳を手に入れられます。

年金手帳に書いてある内容で大切なのは「基礎年金番号」です。基礎年金番号は、国民年金や厚生年金といった公的年金制度で共通して使用する1人1つの番号。10桁の数字になっています。1996年までは、年金制度ごとに違う番号を割り振っていましたが、1997年以降はそれを統一して、1つの基礎年金番号で管理するようになったのです。他にも、国民年金の種別や、厚生年金の加入記録・脱退記録などが記載されています。

今でも、就職した場合などに、勤務先から年金手帳を提出するように言われる場合があります。それは、年金の手続きをするために、基礎年金番号をチェックする必要があるからです。

中には、勤務先に年金手帳を預けている方もいるでしょう。

しかし、年金手帳が廃止されれば、そういったことも不要になります。なぜなら、基礎年金番号の代わりにマイナンバーが使われるようになったからです。

マイナンバーによって薄れた年金手帳の必要性

2015年10月以降、住民票を持つ方全員に対して1人にひとつ、12桁のマイナンバーが通知されています。マイナンバー制度は、社会保障・税・災害対策の分野で効率よく情報を管理することで、国民の利便性アップや行政の効率化などを行うために導入されたものです。近年では、コロナ禍によって実施された「特別定額給付金」の給付や、キャッシュレス決済とマイナンバーカードを紐づけるとポイントがもらえる「マイナポイント」などでも活用されました。マイナンバーを各種手続きに活用できる場面は、少しずつ増えています。

年金の手続きも、例外ではありません。

これまで、年金に関するさまざまな手続きをするには、基礎年金番号が必要でした。しかし、日本年金機構では、2017年1月からマイナンバーによる年金相談や照会の受付をスタート。さらに2018年3月5日からは、基礎年金番号で行っていた届出・申請もマイナンバーでできるようになったのです。そのうえ、マイナンバーと紐づいた「マイナポータル」からは年金加入記録の照会などもできるようになっています。

年金に関する情報は、すでにマイナンバーで管理されているのです。

また、基礎年金番号が必要だという場合も、行政手続を簡単・便利にするために、年金手帳の提出が求められない場面が増えています。つまり、年金手帳そのものの必要性が薄れてきてしまったのです。

そんななか、2020年6月5日、「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が公布されました。このなかに、2022年4月から年金手帳が廃止されることが盛り込まれた、というわけです。

年金手帳が廃止されたあとはどうなる?

2022年4月以降に20歳になった方や、10代で就職した方などには、年金手帳の新規発行は行われなくなります。とはいえ、基礎年金番号がなくなったわけではありません。2022年4月以降は、年金手帳の代わりに「基礎年金番号通知書」という書類が送られる予定です。この書類に、基礎年金番号が記載されます。

基礎年金番号通知書の書式は現時点で決まっていませんが、「年金手帳の代替として年金制度の象徴となるようなシンボリックなもの(色つきの上質紙など)とすること」「手元に丁重に保管してもらうため、名称を「基礎年金番号通知書」とし、大臣印の印影を入れること」「現在、共済年金加入者に送付している「基礎年金番号通知書」との統一を行うこと」などが検討されています。

一方で、すでにお持ちの年金手帳は、年金手帳の廃止後も引き続き基礎年金番号を明らかにする書類として利用できます。もしも基礎年金番号が必要になる手続きがあっても、年金手帳があれば安心です。

ただし、年金手帳廃止後は、再交付の申請ができなくなります。もし年金手帳をなくしてしまい、どうしても手元に欲しいという方は、廃止前に再交付の手続きをしておくといいでしょう。

もっとも、「そもそもマイナンバーで年金の手続きができるのであれば、基礎年金番号は不要では?」と思われるかもしれません。今のところ、基礎年金番号が必要になる手続きやマイナンバーがあれば基礎年金番号は必要ない手続きなどの詳細は明らかにされていません。

ただし、日本年金機構のウェブサイトによると、「年金の手続きではマイナンバーまたは基礎年金番号を利用するが、海外に転出された場合や国民年金保険料の口座振替の申出などではマイナンバーではなく基礎年金番号で手続きを行う」といった旨が記載されています。
ですから、今のところは、年金手帳は大切に保管しておいたほうがよいでしょう。

今後の動向にも注目していきましょう。


年金に関する情報がマイナンバーを軸に一元化されることによって、年金手帳の役割は終わりを迎えようとしています。ただし、今のところ、基礎年金番号が必要になる手続きやマイナンバーがあれば基礎年金番号は必要ない手続きなどの詳細は明らかにされていません。今度の動向にも注目していきましょう。

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