雲仙温泉街、再び動きだす 土砂崩れで犠牲 森さん最後の投稿を公開

森さんが観光PRサイトへ最後に投稿した記事

 大雨による雲仙温泉街(長崎県雲仙市)の8月13日の土砂崩れで犠牲になった雲仙温泉観光協会職員の森優子さん(32)が、災害の前日に雲仙観光PRサイト「全員集合!雲仙ポータル」に投稿していた記事が9月8日、公開された。同サイト編集長の加藤隆太さん(42)=雲仙湯せんぺい 遠江屋本舗専務=は「ゆうこりん(森さん)と仲間で思い描いた雲仙の実現に向けて、情報発信を続けていく」と決意を新たにしている。
 サイトは、市と温泉街の観光関係者らが今年3月に開設し、イベントなど活性化への取り組みを随時公開している。
 「地獄生まれ、地獄育ちのゆうこりん♫」として発信してきた森さんの最後の投稿は、8月3日に温泉街近くにオープンした共同オフィス「コワーキングスペース H.U.B(ハブ) 雲仙」の紹介記事。ガラス張りの明るい屋内や施設から望む山や湖の写真を載せ「雲仙では初めての本格的なコワーキングスペース。目の前のおしどりの池と、自然豊かな環境で、非日常を体験できる開放的な空間」と利用を呼び掛けている。
 投稿文と写真のデータは、災害前日の12日に加藤さんに送信されていた。加藤さんが着信に気付いたのは14日ごろで、地元消防団員として、小地獄地区の土砂崩れに巻き込まれた森さんの捜索を続けていた最中だった。
 「つらくて内容を確認できない」「早く公開してあげないと」。思いが交錯し、公開が遅れた。「隆太さん、サイトの更新が止まってますよ。早くアップ(公開)してくださいね」。森さんからこんな催促が来るんじゃないかというかなわぬ願いも心のどこかにあったという。

観光PRサイトの更新作業をする加藤さん=雲仙市、雲仙温泉街

 サイト内には、森さんのこれまでの投稿や、森さんが出演している動画が残っている。森さんは東京ディズニーランドでキャストを務めた経験もあり、加藤さんは「雲仙温泉がターゲットにする女性客の視点での発想やセンス、広報力は段違いに頼もしかった。かけがえのない存在」と惜しんでいる。
 市観光戦略が掲げる“雲の上の避暑地雲仙”の実現に向け、「再び動きだす雲仙温泉街の姿を発信し続けるので、応援をお願いします」。加藤さんは森さんの思いを代弁し、こう呼び掛けた。

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