歴代6人の日本代表監督から重用された男 今野泰幸の「特異体質」

今野の肉体に隠された謎とは

【多事蹴論(13)】 2005年から17年まで歴代6人の日本代表指揮官が選出し、重用したMF今野泰幸(38=J2磐田)には意外な“秘密”があった。

主に守備的MFとしてプレーし、的確なポジショニングでピンチを防ぎ、ボール奪取から前線へのパス供給など、攻守両面で存在感を発揮。また守備的MFをメインとしながらもセンターバック、サイドバックなど、さまざまなポジションをこなすユーティリティー選手として各クラブで活躍するとともに日本代表でも長くプレーした。

特に歴代の日本代表監督たちがこぞって今野を選出したのは、そのパフォーマンスと器用さとともに意外な理由があったという。日本サッカー協会で会長を務める田嶋幸三氏は技術委員長時代に「今野は日本代表に欠かせない選手なんだ。あまり知られていないけど彼は疲労がたまりにくく、そして抜けやすい体質だから。90分フルで試合した翌日にはもう通常の状態に戻っているくらい。とっても貴重な存在なんだ」と明かしていた。

田嶋委員長によると、実際に日本代表イレブンの試合後の疲労度を計測すると、他の選手が試合前のコンディションに戻るのに約2日かかるのに対し、今野は約1日で“正常値”に戻るという。このため「連戦が続く日本代表のようなチームでは戦力として確実に計算できる選手が重宝される。だから今野は、いつも代表に呼ばれる」と説明していた。

日本代表が戦うW杯や同アジア予選、アジアカップなどの国際舞台は中3日や中4日での連戦が当たり前で、選手が本来の実力を発揮するにはコンディションの維持が必須だ。しかし選手によっては疲労が抜けにくいタイプがいるなど、試合に向けて指揮官が常に戦力として計算できるかは微妙なところ。今野の場合、そうした心配がない。これは大きなメリットになるわけだ。

しかも、複数ポジションを本職のように苦もなくこなせるため歴代の代表監督は今野を重用。05年に初めて日本代表入りを果たしたジーコ監督時代からイビチャ・オシム監督、岡田武史監督、アルベルト・ザッケローニ監督、ハビエル・アギーレ監督、バヒド・ハリルホジッチ監督とさまざまなタイプの指揮官の下で活躍し、国際Aマッチ93試合4得点をマークした。

また、パフォーマンスと特異な体質以外でも日本代表で欠かせない存在だった。今野は「いじられキャラ」としての地位を確立し、チーム内でもモノマネなどでイレブンを和ませてきた。10年南アフリカW杯を終えて帰国した会見ではなぜか、DF田中マルクス闘莉王のモノマネを披露し、その名を全国にとどろかせた。

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