「40代の平均貯金額に足りない」コロナ禍で貯金ができなくなった夫婦の悩み

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、43歳・会社員の女性。同い年会社員の夫と2人暮らしの相談者。コロナ禍で収入が減ってからあまり貯金ができておらず、「40代の平均貯金額」に足りていないことを気にしています。FPは家計状況をどう見るのでしょうか? FPの横山光昭氏がお答えします。

DINKSです。これから先も夫婦二人で歳を取っていくと思うのですが、今の貯金の仕方で今後も大丈夫なのか、心配です。

コロナの影響で手当の支給が減り、収入がやや減りました。それからはあまり貯金ができなくなってしまいました。ですが、「40代の平均貯金額」をネットの記事などで見ると、令和2年で1,012万円と出ています。私たちはそれに足りていませんし、住宅ローンもあります。他の同年代のご家庭も、平均ほどの貯金を持っているのでしょうか。私たち夫婦が目標とすべき平均的な金額をお教えいただき、それを目標に貯金を増やしていきたいと思います。

また、貯金のペースを世の中の人に合わせるとしたら、支出をどのように減らしていくとよいでしょうか。収入が減ってからの生活を振り返ると、デリバリーの利用や、ネットスーパーの利用、定額の方がおトクだと思いサブスクをいくつか使い始めた、というところが変化したところだと思います。この使い方がよくないのでしょうか。

自分だけがきちんとできていないような気がしており、自信がありません。一般的なご家庭と同じようにやりくりしていけるよう、ご助言いただければと思っています。

【相談者プロフィール】

・女性、43歳、会社員。夫、会社員、43歳

・手取り収入月収:相談者20万4,000円、夫30万5,000円

・年間ボーナス:相談者約60万円、夫なし

・貯蓄:預貯金850万円

・住宅ローン:残高3,200万円(6年前に借り入れ、金利0.975%、35年ローン)

・毎月の支出の目安:49万 2,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費(住宅ローン+管理費):15万円

・食費(外食含む):7万2,000円

・水道光熱費(電気・水道): 1万8,000円

・通信費(スマホ2台・ネット回線):1万7,000円

・生命保険料:9万1,000円

・日用品代:6,000円

・医療費:7,000円

・教育費(妻習い事):7,000円

・交通費:9,000円

・被服費:2,000円

・交際費:2万5,000円

・娯楽費:4,000円

・こづかい(夫婦分):5万円

・その他:3万2,000円


横山:ご相談者は、これから先、老後も含めてどのような暮らしがしたいですか。他の方と同じようにするということが大切な場合もあるでしょうが、お金に関しては違うと思います。どういう暮らしがしたいか、何にお金を使っていきたいのかによって、貯めるべき金額が異なってきます。「周囲の人と同じ」「平均」「一般的」にとらわれすぎず、「自分にとって」を基準にして考えていきましょう。

平均貯金額はあくまで目安。調査機関によっても異なる

平均貯蓄額のデータを気にされていますが、それは一部の貯蓄を多く持っている方が引き上げている金額であることはご存知でしょうか。同じ年代の多くの方は、平均貯蓄額まで持っていないと思います。

ご相談者が見たデータは、恐らく2020年に金融広報中央委員会が実施した「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)」ではないかと思います。貯蓄の平均額のデータは他にもあり、労働省の「国民生活基礎調査」、総務省の「家計調査(貯蓄・負債編)(二人以上の世帯)」からも見ることができます。それによると、前者では651万円、後者では1,081万円が平均額です。それぞれ金額が違いますから、平均額だけを鵜呑みにしすぎてもいけません。

平均貯金額はあくまで目安。調査機関によっても異なる

それよりも、ご相談者ご夫婦がどのように使うためにお金を貯めたいのかという視点が大切です。将来、退職金はいくら出るのか、年金はいくら見込めるのか。生活費にいくらかかるのか。続けたい趣味、叶えたい夢。それにはいくら必要なのかを総合して、お金を貯める目標を作るとよいでしょう。

現在の貯金額は850万円。まだまだ貯められる余地はあると思いますが、頑張ったと思いますし、決して少なくないと思います。

支出の仕方が変わっても、家計の考え方は基本同じ

「コロナの影響で収入が減り、在宅生活による支出が増えた」という悩みは、最近とても多く聞きます。今の暮らし方に慣れてしまうと、簡単に支出の仕方を元に戻すことは難しいでしょう。今の状況に合わせつつ、支出を絞ることを考えます。

感染予防、外出自粛が要請され、外食はデリバリーや宅配が多くなり、ネットスーパーもずいぶんと使われるようになりました。外出せずに気軽に購入できてしまいますが、まずは決済をする前に「本当にネットで注文する必要があるのか」を考えてみてもよいでしょう。

サブスクリプション(サブスク)、は毎月の支払いがそう高くないので、使わなくなっても解約し忘れてしまうということが起きています。3~6カ月後に一度、使っていないサブスクがないか見直してみましょう。

支出の仕方は変わっても、家計管理の仕方は同じです。必要なものにはお金を払い、不要なものはカットする。その基準を自分の中に作るようにしましょう。自分なりに、支出全体の5〜10%程度、金額にして2万5,000円から5万円をまずは削減してみるようにしてはいかがでしょう。

支出削減で「なりたい自分」に

支出を減らすことは、ダイエットに似ています。難しいのは、体形は目に見えてその変化が分かりますが、家計は形が見えないという点です。つまり、評価していくことが難しく、一般的な良い状態はわかっても、それがその人にとって良いのかが見えにくいのです。

ダイエットであれば、スリムになりたい、筋肉をつけたいなど、理想とする体形があるでしょう。細くなりたいなら細くなるための、筋肉質になりたいなら筋肉をつけるための方法があるはずです。家計もそれと同じで、どのような家計にしたいかで取り組み方が異なります。単にお金を貯めればいいのか、目標のためにお金を貯めるのかといった違いで、取り組む姿勢、取り組み方が変わります。

目標とする部分は、きっと他人とは異なるはずです。ですから、他人と比較する必要はありません。自分の目標に向かって、自分なりの形で進めていけばよいのです。

平均ばかりを参考にしていると、自分の今の状況を把握しないままに、平均に収めなくてはというプレッシャーだけで動いてしまいます。その結果、自分が望まない方向に進んでしまったり、必要時にお金がなかったり、日々の暮らしに我慢が多く、ストレスフルな状況になってしまうということもあり得ます。自分に軸を持ち、自分が満足する暮らしをし、自分たちに必要な金額を蓄えられるよう、やりくりを考えていきましょう。

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