学資保険が負担で貯められない共働き夫婦。貯蓄残高50万円の理由が未来を左右する

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、2人の子をもつ共働き夫婦の妻(39歳)。子どもの教育費が心配で学資保険を多めにかけていますが、それが負担になって車の購入費が貯まらないそうです。家計に問題はあるのでしょうか? FPの氏家祥美氏がお答えします。

2歳と4歳の子をもつ会社員夫婦(私39歳、夫40歳)です。

子どもの教育費が心配で、学資保険に毎月5万と、かなりの額をかけています。また、車の購入資金として600万円貯めたいのですが、なかなか貯まりません。家計を見直したいと思い、7月から固定費を削減し始めたところです。

今の家計状況で学費と車代を賄えますか?

夫の手取り月収は28~34万円で、夜勤がない今は28万円。10月から再開予定です。

【相談者プロフィール】

・女性、39歳、会社員、既婚

・同居家族について:

夫/40歳、会社員、手取り月収28~34万円

(夜勤がない今は28万円。10月から再開予定)

子ども2人/2歳、4歳

・住居の形態:持ち家(戸建て)

・毎月の世帯の手取り金額:39~44万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:140万円

・毎月の世帯の支出の目安:28万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:7万円

・食費:3万円

・水道光熱費:2万円

・教育費:2万円

・保険料:学資保険5万円、生命保険1万5,000円

・通信費:2万円

・車両費:0円(車検代など年20万円)

・お小遣い:夫3万円、私1万円

・その他:車の車検と税金分1万5,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:10万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):50万円

・現在の投資総額:150万円

・現在の負債総額:3,300万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:100万円


氏家:現在、ご相談者さんは共働きでお子さん2人を育てています。学資保険料が毎月負担で、なかなか車の購入費用が貯められないということですが、どんな状況なのでしょうか。さっそく家計の内訳を見ていきましょう。

ボーナスに頼らない計画的な家計

毎月の手取り収入は変動があるものの39万円以上で、その内訳は夫が28万円~、妻(ご相談者さん)は11万円~となっています。

それに対して、実質的な支出は23万円台です。毎月出ていく固定費は合計16万円(住居費7万円、教育費2万円、水道光熱費2万円、生命保険1万5,000円、通信費2万円、車検と税金分1万5,000円万円)、変動費は7万円(食費3万円、お小遣い夫3万円・妻1万円)という内訳です。

2歳と4歳のお子さんがいる共働き家庭なので、教育費2万円は幼児教育無償化の対象外となる2歳のお子さんの保育料が中心と思われます。よく見ると、車検と税金分として1万5,000円ずつ積立をしているのも立派です。それぞれの内訳も大きな無駄はみられず、小さなお子さんがいるなかで、よくやっているご家庭です。

収入39万円―支出23万円=16万円になります。ここから学資保険の保険料を毎月5万円支払っているほか、毎月10万円ずつ貯蓄をしています。学資保険で年間60万円を貯めて、さらに毎月の家計から年間120万円を貯めている計算になります。

続いてボーナスを見ていきましょう。ボーナスは1年間で手取り140万円ですが、このうち100万円を貯蓄に回しています。ボーナスに頼り切らない家計づくりができているのは立派ですね。

貯蓄残高50万円の理由に注目

今回のご相談は、「学資保険の支払い月5万円が負担で、車の購入資金600万円が貯められない」というものでした。しかし、ここまで家計を診た限り、学資保険で年間60万円貯めているのに加えて、年間220万円の貯蓄ができている計算になります。車の買い替え予算が600万円ということなので、計算上は220万円×3年間で車の買い替え代金が余裕を持って貯められる計算になります。

ところが、現在の残高を見てみると、貯金総額は50万円しかありません。1カ月10万円ずつ貯めているという話なので、5カ月分の貯蓄しか残っていないのが気になりました。

考えられるパターンは2つ

ここから考えられるパターンは2つあります。50万円しかない理由がどちらのパターンに当てはまるかによって、家計の未来が大きく異なります。

NGパターンとしては、年間220万円貯蓄できるはずなのに、使途不明金がたくさんあって実はほとんど貯められていないというケースです。この場合は、貯蓄の前提が間違っているので、車の購入資金がなかなか貯められないというのも納得です。

OKパターンとしては、年間220万円のペースで貯蓄ができているものの、最近大きな出費があって、一時的に貯蓄が減ってしまったというケースです。お子さんが4歳と2歳であること、負債が3,300万円あることを考えると、最近マイホームを購入してまとまった頭金を支払ったのかもしれませんね。こちらの場合には、今後は年間220万円のペースで貯蓄ができると考えられるため、車の購入資金についても今後は貯められると思っていいでしょう。

教育費は、私大文系学部ならギリギリ足りる?

学資保険の保険料は月額5万円ですから、1年間で60万円が貯められます。仮に10年払いとした場合、支払総額は600万円になるので、教育費としてはお子さん一人当たり約300万円ずつとなります。国立大学であれば4年間の授業料が賄える金額です。

15年払いの場合には、60万円×15年=900万円の保険料を支払うことになります。これで、お子さん一人当たり約450万円が貯められます。私立大学の文科系学部であれば、入学金と4年間の授業料がギリギリ賄える程度でしょうか。ただし、私立大学の場合には、学校によっても学部によっても授業料は大きく異なります。授業料以外にも設備費などの費用がかかる場合もあるので、文科系でも安心は禁物です。

それぞれのお子さんの誕生直後から学資保険に加入し18年間保険料を払い続ける場合には、60万円×18年=1,080万円の保険料を支払うことになります。お子さん一人当たり約540万円となりますね。これは、医科歯科系を除いた私立大学の入学金と4年間の授業料に近い金額です。ひとまずこのあたりの金額を目安に準備をしておき、理系に進学した場合や、一人暮らしを始めた場合、大学院へ進学する場合などは、学資保険以外の貯蓄を充てるか、お子さんに奨学金を利用してもらうなど検討してもいいでしょう。

ポイントをまとめると…

家計全体をざっくりとみる限り、上手に家計管理できているいい家計です。使途不明金などが無く、ご記入いただいた貯蓄ペースがそのまま信じられるなら、お子さん2人の教育資金も車の買い替えも問題なくできるでしょう。ローン残高も今は3,300万円ありますが、毎年220万円のペースで貯蓄ができているのなら、繰上げ返済資金も貯められるので問題ありません。焦らずに今のままいけば大丈夫です。

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