1000万円以上のお金が振り込まれたら銀行から電話が…どうしたらいい?

退職金や満期の保険金など1,000万円以上のまとまったお金を受け取った場合、どうしたら良いのでしょうか?

ファイナンシャルプランナーとして活動している筆者の元には、主に定年前後の会社員の方からご相談が寄せられます。その中でも、退職金を受け取った時に銀行から電話がかかってきて複数の金融商品を勧められたのでどうしたらいいのか、と聞かれることが多々あります。

実は、筆者の身にも同じようなことが起きました。今回はその出来事を紹介したいと思います。


銀行からの勧誘には要注意

つい数ヶ月前のことですが、筆者の携帯に銀行から電話がかかってきました。今まで銀行から電話がかかってきたことはありません。不正利用があったのだろうか、やや不安な思いで耳を傾けていると、筆者の口座に大きな額のお金が振り込まれたので渡したいものがある、店頭に来られる際にぜひお声がけください、と言った内容でした。ちょうど満期になった保険金が筆者の銀行口座に振り込まれていたのです。

銀行の行動はさすが素早いなと感心をしつつ、店頭に足を運んだところ、普段は通されることのない応接ブースに案内されました。しばらく待っていると、私に電話をしてきた担当者が現れて、来店のお礼と今後そのお金をどうするのかと言ったような話題になりました。

すぐに使うお金ではなかったので、とりあえずは定期預金にするつもりの旨を伝えたところ、しばらく使う予定がない資金であれば投資信託や外貨建て保険で運用されるのはいかがでしょうか?と勧められたのです。

なるほど、このように退職金を受け取った方々に金融商品を勧めているのだな、と納得しました。応接ブースに通され、おもてなしを受けているような感覚に囚われて、つい「お願いします」と言ってしまいそうになりましたが、ここは要注意です。しばらく使う予定がないといっても、来年使う可能性もあります。そんな短期間に投資信託や保険に回してしまったら元本割れすることもあり得ます。

1,000万円を超える預金はペイオフに注意

「ペイオフ」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか?簡単にいうと、1金融機関1預金者あたりの元本1,000万円までとその利息等は預金保険制度の対象となるという制度です。預け先の金融機関が破綻しても預金保険機構から直接お金が支払われる「ペイオフ方式」があるため、私たちが預けたお金は保護されます。

しかし、保護の基準を超える部分は破綻先の金融機関の財産状況に応じるため、極端に言えば払い戻しされない可能性もあるのです。つまり元本1,000万円以上のお金が振り込まれた時は複数の銀行に分散して預け入れておく必要があります。

厚生労働省の中央労働委員会が行った賃金事情等総合調査(令和元年)によると、平均退職金支給額は、定年までの満勤勤続で2,289万5,000円と1,000万円を遥かに上回っていることからペイオフへの対策をしなければなりません。とは言っても、複数の金融機関に分散させるのは面倒だと思われる方もいるでしょう。そこでお伝えしたいのが「個人向け国債」の活用です。

国債と銀行預金はどちらが信用できる?

国債は、文字通り国が発行する債券です。その中でも個人向け国債は半年ごとに利息が支払われ、満期には元本が戻ってきます。日本の財政は安心なのか、と心配する人もいるでしょうが、そもそも国の財政が破綻=国債が暴落する時には、国よりも先に銀行が破綻する可能性の方が高いでしょう。そして何よりも個人向け国債はペイオフ対策にも有効で、元本と利子の支払いを日本政府が行うため、1,000万円+利息までといった限度額は設けられていません。

個人向け国債には3種類ありますが、現在のような低金利の時には「変動10」を選ぶのが有利です。というのも、今後保有している間に金利が上昇すれば適用される金利もある程度上がるからです。また、最低でも0.05%の金利が保証されているのでメガバンクの定期預金金利よりも高いことがわかります。

さらに、10年満期ではありますが、発行から1年経過後は中途換金ができます。1年経過して解約すると直前2回分の利子の一部が引かれるので実質1年経過すれば元本割れしないことになるからです。

個人向け国債はどこで買えるの?

個人向け国債は、銀行や郵便局、証券会社などで購入できる金融商品です。毎月募集、発行を行っていますから必要な時にタイムリーに購入できます。もちろん、投資信託や外貨建て保険を勧めてきた銀行でも販売をしていますが、最後まで個人向け国債を勧められることはありませんでした。なぜなら、投資信託や保険を販売した方が銀行にとっては利益が上がるからです。もちろん、銀行は慈善事業ではないのですから、悪いことをしているわけではありません。

ただし、金融商品を勧めてくる銀行の人は運用のプロではなく販売のプロです。丁寧に話を聞いてくれる、あるいは親切だからと勧める人で判断するのは避けましょう。商品のメリット・デメリットをしっかりと理解したうえで、自分にあった商品を選ぶことが大切です。筆者にとっては、自分のお金は自分で守るしかないことを改めて実感した出来事でした。

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