【動画】橋物語・面無橋(南島原) 自然石で造られたアーチ式石橋

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自然石を積んで造られた「面無[おもなし]橋」

 長崎県島原半島南部に位置する南島原市北有馬町。雲仙普賢岳の山あいに、自然石を積んで造られた「面無[おもなし]橋」はある。江戸時代末期、田畑を往来するために有馬川水系の高江川に架けられ、200年近く地域住民の生活に欠かせない橋として使われている。
 旧南高北有馬町(現在の南島原市)職員で、現在は南島原ガイドの会「有馬の郷[さと]」の会長を務める佐藤光典さん(76)によると、島原半島には自然石で造られた40基の石橋があり、うち10基が水量豊かな有馬川流域の同町にあるという。2019年2月、地域の特性を残した土木構造物として面無橋のほか、明治から大正期に架けられた坂下川の荒田下[あれたしも]橋、田中橋、元平橋、坂下橋が「有馬の石橋群5橋」として県の有形文化財に指定された。
 最も古い面無橋は1804年(文化元年)架橋と推定される。長さ12メートル、幅3.4メートル、高さ5.2メートルの小さなアーチ式石橋。通常、頑丈さを重視し、切り石を使用することが多いが、面無橋は全て自然石で造られているという珍しい橋だ。直下の川床を約60センチ掘り下げて流速を速める「堰[せき]落とし」のおかげで、洪水の際に田畑にあふれることなく、橋も崩れなかった。佐藤さんは「石工の知恵と工夫や労苦が推測できる」と話す。
 稲作やカボチャ作りが盛んな地域で、川沿いには静かな田園風景が広がる。数々の映像作品で紹介されるなど観光名所としても知られる。
 19年の第14回札幌国際短編映画祭の国内作品部門で入選した南島原市が舞台の短編映画「記憶の灯[あかし]」(野上鉄晃監督)にも登場。主人公の小学男女が下校中に橋を渡りながら触れ合うシーンが撮影された。野上監督は「自然と調和して一部になっている様に感動した」と振り返る。
 有馬の郷[さと]が毎月1回主催する「ふるさと発見塾」でも「石橋群巡り」は参加者に好評。佐藤さんは「コロナ禍で開催を休止しているが、収束次第再開したい」と意気込む。
 面無地区自治会長の飛永正保さん(63)は「幼少時は干し芋を大量に積んだ牛車がふもとの町まで運搬していた。自然豊かでウナギや川カニを捕って食べていた。時代が移り変わっても橋と川は生活の基盤。少子高齢化が進み、橋を歩く子どもたちの姿は減ったが、のどかな田園風景は後世に残したい」と遠くを見詰めていた。