全面解除

 きょうから10月。東京など19都道府県の新型コロナ緊急事態宣言と8県のまん延防止等重点措置が解除された。日本のどこにも緊急事態宣言や重点措置が発令されていないのは4月4日以来で、試しに数えてみたら実に179日▲久しぶりに戻ってきた真っさらの日本地図だが、何かのスイッチがパチンと切り替わるわけではない。例えば、沖縄はこれから1カ月間「感染拡大抑止期間」、東京は「リバウンド防止措置」を24日まで続ける▲もちろん警戒を一度に緩めるわけにはいかない。ただ、宣言や重点措置の解除が劇的な変化をもたらさないことは、裏を返せば、宣言を発出する効果が失われてしまったことの何よりの証拠に思える。だって、何も変わらないのだ▲今回の判断、決め手になったのは新規感染者数の全国的な落ち着きだが、厚労相や一部の専門家は「なぜ減っているのか確証が持てない」と首をかしげている。決定版と呼べる対策が見当たらないのは相変わらずだ▲全面解除には、退任する菅義偉首相の意向が強く働いている。立つ鳥跡を濁さず、リセットして後継に…その心情は分かる気もするのだが▲この先も進行形のまま続くコロナ対策に“私情”を持ち込むのはどうだったか。「首相交代」がウイルスの何かを変える道理などないのに。(智)

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