斎藤佑樹が惜別登板で流した「涙の訳」と後輩に託した「思い」

斎藤佑樹は珍しくマウンドで涙を流した(代表撮影)

後輩の心遣いに、思わず涙がこぼれた。日本ハムの斎藤佑樹投手(33)が3日のイースタン・リーグDeNA戦(鎌ケ谷スタジアム)で二軍戦最後の登板を行い、打者1人に対して空振り三振。試合後、登板中に思わず流した涙の理由を明かした。

涙に包まれた登板だった。観衆の注目を集めながら6回からマウンドに上がった斎藤。スタンドからはオレンジ色の名入りタオルを掲げるファンも多く見られ、大きな拍手で迎え入れられた。

注目の1球目。斎藤は2番・乙坂に対して130キロの直球を投じると、高めに外れてボール。続けて投じた同じく130キロの直球も低めにワンバウンドし、カウントは2―0。その後はより力が入ったのか、133キロの直球で連続スイングを奪うと、打席に向けて片手を差し出し、間を開けた。

様々な思いがこみ上げたのだろう。右腕の目には涙が浮かんでおり、しっかりと目元を拭いきると、最後は132キロの直球を力いっぱい投じ、乙坂から3度目のスイングを奪った。空振り三振としてこの1打席限りで降板となると、母校・早実の後輩で一塁の清宮らが駆け寄りハグ。涙を流しながらナインとも握手を交わし、一塁側ベンチへ一礼、スタンドへも帽子を取って声援に応え、「ハンカチ王子」は静かに三塁側ベンチへと下がっていった。

試合後にはセレモニーも行われ「皆さんとの思い出は、僕の一生の宝物です。11年間本当にありがとうございました」と、登板時とは打って変わり笑顔であいさつ。グラウンドには登場曲として使用していた「勇気100%」が流れ、感動のムードに包まれていた。

普段は人前で涙を流すことがない男なだけに、特別な一瞬であったことは間違いない。「今日は泣かないつもりだった」としていた右腕だったが、後輩の真っすぐな気持ちに心打たれたようだ。「一番は、(清宮)幸太郎が、投げる前にマウンドに寄ってきて『楽しんで投げてください』って泣きながら来たので。それが一番ね、ちょっと(涙腺に)来ちゃいましたね」と告白。清宮自身も「何か声はかけたいなと思っていた。でもちょっとそうですね…僕もちょっと(涙腺に)来ちゃってたので…」と照れ笑いを浮かべた。

そんなかわいい後輩へは「もう絶対来年以降、ファイターズを代表するスラッガーになるので…。頑張ってほしいですね」と力強いエールも送った斎藤。思いを託された託された後輩も「本来なら一軍で僕も送り届けたいっていうのがありましたけど、この場でしかお別れできないむなしさというか、やるせなさがすごいあったので…。意地でも来年は一軍で活躍する、それだけだと思います」と、今季いまだ一軍昇格がない悔しさとともに、来季に向けた誓いを振り絞るように語った。

先輩から後輩へ――。涙のマウンドで、その思いは確かに託された。

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