球団史上61年ぶりの大役 DeNA牧に三浦監督が“ルーキー4番”を任せた理由とは?

DeNA・牧秀悟【写真:荒川祐史】

オースティン代役に新人を指名、指揮官「何も変える必要はない」

■阪神 2ー0 DeNA(6日・横浜)

DeNAのドラフト2位ルーキー・牧秀悟内野手が6日、本拠地・横浜スタジアムで行われた阪神戦でプロ入り後初の4番に抜擢され、4打数2安打で期待に応えたが、チームは0-2で惜敗した。球団で新人が4番を打つのは、大洋時代の1960年6月12日の黒木基康外野手以来、実に61年ぶりだった。

「4番・二塁」で先発した牧は、2回先頭で第1打席を迎えると、阪神先発の西勇の真ん中低めシュートをとらえ左前打で出塁。4回無死一塁の第2打席でも、再び西勇の内角低めのシュートをとらえ、左翼線へ二塁打を放った。

前日までチーム最多の78試合で4番を務めていたタイラー・オースティン外野手が、左ふくらはぎの肉離れで登録抹消。三浦大輔監督は代役に新人を指名した理由を「状態がいいし、勝負強いので」と説明。「うまく腕をたたんでシュートをとらえた。牧らしい打撃だったと思います」と称えた。

牧は中大3年の2019年7月、日米大学野球選手権で大学日本代表の4番を務めた経験がある。プロ入り後は2番で6試合、3番で23試合、5番で16試合、6番で23試合、7番で41試合に起用され、さまざまな役割を果たしてきた。指揮官は試合前、「4番に入れるが、いつも通りの打撃をすればいい。何も変える必要はない」と声を掛けたと言う。

もっとも、チームには今季43試合で4番経験のある主将の佐野恵太外野手も、大砲のネフタリ・ソト内野手もいる。前日まで5番を打ち、今季西勇に対戦打率.750(4打数3安打=試合前時点)と相性が良かった宮崎敏郎内野手の打順を、1つ上げる方が自然に見えた。

新人初のサイクル安打達成、打率では阪神・佐藤輝明を5分リード

それでも牧を指名したのは、来季以降を含めた伸びしろの大きさに期待したからに他ならない。三浦監督も「当然、それもある」と認める。さらにもう1つ、激しさを増す新人王レースでもアピールポイントになりそうだ。

牧は6日現在、打率を.289に上げ、ライバルの阪神・佐藤輝明内野手の.239に5分の大差をつけた。本塁打も21本まで積み上げ、一発長打が持ち味のサトテルの23本に肉薄している。65打点でも「4」差をつけた。8月25日の阪神戦では、新人として史上初のサイクルヒットも達成し強烈なインパクトを残した。

一方、広島の守護神・栗林良吏投手が29セーブを挙げ、防御率0.41。45試合(44回1/3)に登板してわずか2失点という無敵ぶりである。さらに、高卒2年目のヤクルト・奥川恭伸投手も8勝3敗、防御率3.14で、現在首位のチームがこのまま6年ぶりのリーグ優勝を勝ち取れば、その貢献度も加味されるだろう。

「新人初のサイクル安打」に「チーム61年ぶりの新人4番」の称号を加えた牧は、どう評価されるか。もちろん残り14試合の活躍のほどによっても、情勢は大きく変わる。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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