ヨハンの父率いるKMS、2022年電動化のWorldRX最高峰“RX1e”に3台体制でのエントリーを表明

 WorldRX世界ラリークロス選手権で3年連続のドライバーズチャンピオンを獲得したヨハン・クリストファーソンの父であり、自らファミリーチーム『クリストファーソン・モータースポーツ(KMS)』を率いるトミー・クリストファーソンは、2022年からの導入が予定される電動最高峰“RX1e”クラス初年度に向け、エントリーを表明した最初のチームとして確認された。そのKMSは、すでに14台のキット販売がアナウンスされているRX1e車両のうち「3台を発注済み」であることも明かしている。

 ラリークロス・プロモーターGmbHおよび統治機関であるFIA国際自動車連盟は、今月に入ってからオーストリアのクライゼル・エレクトリック社製となるRX1e用電動化キットが、すでに14台分を受注したと発表していた。

 すでにテストも実施されているRX1e“ミュールカー”は、シュコダ・ファビアのラリー2エボをベースに、前後のアクスルにモーターを搭載するツインモーター仕様とされ、2個のインバーターと革新的な冷却システムを備えた52.65kWhのバッテリーを採用することで、総合出力は500kW(約689PS)に到達。瞬間的に880Nmものトルクが供給される。

 その容量52.65kWhのバッテリーはシステム重量300Kgとなり、車両全体の総重量は1330kgに規定される。また、現行のRXスーパーカーより強大なトルクを発生することから独自の安全機能も備え、新規シャシーのみならず既存車両へのコンバートにも対応し、かつ重量配分を考慮した特別設計とされる。

 その電動新時代参入を決めたトミー・クリストファーソン代表は、かつてFIAヨーロッパ・ラリークロス選手権(現EuroRX)のフロントランナーとして活躍し、地元スウェーデンの国内選手権では複数のタイトルを獲得。その後は息子を擁して世界選手権を制覇したばかりか、STCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権でのタイトル獲得などサーキットでも大きな成功を収めてきた。

 2008年に現役を引退し、以降はKMSを率いてEuroRXやSTCCでのプログラムに注力してきたトミー代表は、2014年から世界選手権化されたWorldRXにステップアップ。地元ディーラーの支援を受け“フォルクスワーゲン・ディーラー・チームKMS”としてエントリーしたのち、本社からの指示で地元法人からのバックアップに切り替わり、その名も“フォルクスワーゲン・チーム・スウェーデン”から“フォルクスワーゲンRXスウェーデン”へと段階的に変更してきた。

 そして2017年、2018年にはペター・ソルベルグ率いるPSRXとのジョイントチームに多くの人員を割いて組織マネジメントの母体となり、プロジェクトに重要な人員とインフラストラクチャを供給。ドライバーとチームのタイトル連覇に重要な役割を果たした。

WorldRXで3年連続のドライバーズチャンピオンを獲得したヨハン・クリストファーソンを育て上げた
KMSはTTA時代の2012年やTCR規定移行後にも、ヨハンとともにSTCCでタイトルを獲得している

■WorldRXプロモーター陣の手腕にも期待しているトミー代表

 そして、フォルクスワーゲンがファクトリー活動から手を引いた2020年にはプライベーターに回帰し、エントリー名も“フォルクスワーゲン・ディーラーチーム・バウハウス”としてWorldRXに留まり、息子ヨハンのシリーズ3連覇を支える原動力となっている。

「そう、昨季2020年は独立系チームとして世界選手権タイトルを獲得しているが、電動ラリークロス車両で史上初の世界選手権の王冠を目指して戦うことは、究極の挑戦であり、我々を本当に刺激するものだった。これまでは遠い世界の話だったが、シンプルに挑戦に値する機会であり、断るにはもったいなさすぎる」と、来季電動化を果たす2022年に向けシリーズ復帰を表明したトミー代表。

「我々はこのラリークロスの世界で多くの歴史を刻んできた。もちろん、これこそが我々の最も得意とするジャンルだからね。2022年に向けてはいくつか選択肢があったが、どれも“適切に行うこと”ができなければ、私自身は興味が湧かなかった」

「ありがたいことに、サポートを申し出てくれた新しい投資家たちは、我々と同じように電動ラリークロスの未来を本当に信じており、このエキサイティングな変化を受け入れる準備ができている」

 同時にトミー代表は、WorldRXを運営するプロモーター陣の手腕にも「大きな信頼を寄せている」と語り、電動化時代の幕開けから未来への開発競争が始まると見ている。

「これらのマシンには素晴らしい開発の可能性があり、同時に上質なエンターテインメントを生み出すと確信している。クルマはとても速く高速で、ファンが“眉を釣り上げたり、アゴが外れたり”するほど驚かすことができるだろう。今、我々の焦点は、ともに競技を戦うことができるメーカーと、その仕事を完遂するための適切なドライバーを見つけることに移っているよ……」

 このRX1eの受注アナウンス時にも声明を発表したラリークロス・プロモーターGmbHのエグゼクティブプロデューサー、アーネ・ディルクスも、新世代WorldRX最初の参戦表明チームに対し「3台のマシンがコミットすることは、我々が行ってきたことに対する真の賛同と信念の表れだ」と歓迎の意を示した。

「トミーは最初から、より持続可能な未来に向けた我々の動きを強力に支持しており、KMSの成功記録がそれ自体を物語っている。トミーのビジョンと彼の周りに築き上げられた豊富な経験と専門知識により、チームが最初からフロントランナーになることは間違いないことだろうね」

2021年はEKS JCでアウディをドライブするヨハン。新時代の幕開けに合わせ、父の元へ戻るか
総合出力500kW(約689PS)、瞬間的に880Nmものトルクが供給されるRX1e車両

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