2得点以下の試合は“2勝44敗6分け” 接戦に弱いDeNA、サヨナラ勝ちに見出す意味

DeNA・柴田竜拓【写真:荒川祐史】

途中出場のいぶし銀柴田が9回1死満塁で決勝犠飛

■DeNA 2ー1 中日(10日・横浜)

DeNAは10日、本拠地・横浜スタジアムで行われた中日戦で今季2度目のサヨナラ勝ち。同点で迎えた9回、途中出場の柴田竜拓内野手が決勝の左犠飛を放ち、2-1で競り勝った。DeNAが2得点以下で勝つのは、5月3日の中日戦(バンテリンドーム)に2-1で勝利して以来、わずか2度目。この条件では44敗6分と、ロースコアの展開となると圧倒的に弱かった。それだけに、この1戦をモノにした意味は決して小さくない。

試合を決めたのは、いぶし銀の男だった。9回から二塁の守備に就いた柴田は、1-1で迎えたその裏、1死満塁の絶好機でこの日最初の打席へ向かった。「おいしい(場面だ)ぞ! 」と声をかける三浦監督に笑顔で応えた。

中日は前打者の楠本を申告敬遠し、あえて満塁策を取ったが、身長193センチの守護神R・マルティネスにとって、167センチと小柄な柴田はいかにも投げにくそう。カウント3-0押し出しの一歩手前となった。柴田はストライクを1球見逃し、2球ファウルで粘った後、真ん中の速球を左翼後方まで運び、三塁走者の関根をタッチアップで本塁へ迎え入れた。

「普段、得点圏に走者を置くと力んでしまうのですが、サヨナラの場面だと思うとワクワクしました。三振さえしなければ、何かが起こると思いました。守っている立場からすれば、内野ゴロとかすごく嫌ですから」。プロ6年目・27歳の笑顔が弾けた。

牧、森、知野…「気にならないといえば嘘になりますが」

柴田は「遊撃のレギュラーとして打率3割」の目標を掲げて今季に臨んだが、4月23日の阪神戦の守備で味方野手と交錯し左肩関節亜脱臼を負うなど、再三のケガでスタメンに定着できなかった。遊撃と二塁を高いレベルでこなす守備の名手だが、二遊間には今季、ベテランの大和のほか、ドラフト2位ルーキーの牧、19歳の森、22歳の知野らが台頭。猛烈に突き上げられている。

それでも「年下の子が気にならないと言えば嘘になりますが、(若手の成長は)チームにとって良い事。チームが良い方向に行くことを考えています」と言い切る。それだけに、三浦監督の就任1年目に最下位を低迷中の現状は歯がゆくてならない。「もっとできる、絶対に勝てるはずのチームだからこそ、悔しいです」と語る。そして「首位にいるようなチームは、ロースコアでも勝ち切ることができる。それができないと、順位を上げられない。こういう試合に勝ったことには、すごく意味があると思います」とうなずいた。

実際にこれまでのDeNAは、強力打線を封じられると勝つすべがなく、今季2得点以下の試合では2勝44敗6分。首位に立つヤクルトが、2得点以下でも10勝20敗13分と勝機を見出しているのとは対照的だ。

この日は先発の今永が7回1失点に抑え、8回はエスコバー、9回は三嶋が無失点リレー。主将の佐野は8回に代走を送られベンチへ退いていたが、9回に“脇役”たちがつないで勝利をモノにした。三浦監督も「接戦を取れたことは、チームにとって大きなプラス。ベンチも選手もこういう経験を積み重ねて、もっと上を目指してやっていかないと」と手応えを得た。

DeNAはこの試合に負けていれば、クライマックスシリーズ(CS)進出の可能性が完全消滅するところだったが、土俵際で踏ん張った。それ以上に、ロースコアの展開を制したことの方が来季へ向けて意義深い。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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