解任危機の森保監督を救ったFW浅野 武田修宏氏は「2人の信頼関係が勝利に結びついた」と指摘

試合に勝ち浅野拓磨を迎える森保監督(東スポWeb)

【武田修宏Take it easy】崖っぷちに立たされていたサッカー日本代表が12日のカタールW杯アジア最終予選オーストラリア戦(埼スタ)に2―1で勝利。この試合に敗れれば7大会連続のW杯出場が厳しくなり、森保一監督(53)の解任も不可避だったが、土俵際で踏みとどまった。この勝利に元日本代表FW武田修宏氏(54=本紙評論家)は意外な指摘。各方面から批判されている指揮官の〝弱点〟が勝因になったという。

日本代表はW杯出場を争う最大のライバルから劇的な勝利を挙げた。武田氏は「アジア最終予選に楽な試合はないし、重圧のかかった大一番に勝って本当に良かったよ。相手のサイドバックと守備的MFをしっかりとつぶせたのが勝利のポイントでしょう。それと、クビのかかっていた森保監督を救ったのは浅野だったんじゃないかな」と振り返った。

1―1で迎えた後半41分、日本代表は左サイドを突破した途中出場のFW浅野拓磨(ボーフム)のシュートから相手のオウンゴールを誘発。これが決勝点となり、勝ち点3を手にした。武田氏は「あのシーンを見て思い出したね。森保監督が(2017年に)広島の指揮官を解任されて海外研修に行ったんだけど、最初に訪れたのが、広島時代に指導した浅野がいるドイツ。2人の信頼関係が勝利に結びついたんじゃない」。

負傷明けの浅野に関してはコンディションや試合勘など未知数の部分もあり、ドイツでも日本代表入りを疑問視する報道が出ていた。それでも森保監督はまな弟子の招集に踏み切ったわけだが、ここまでのW杯最終予選ではスランプ気味の選手を信頼し、起用したことが裏目に出たこともあって懐疑的な見方も広がっていた。

武田氏は「森保監督はこれまで〝選手に優しすぎる〟とか〝選手を信頼しすぎる〟って批判されていたよね。実際、そう思うときもあるし、彼の弱点でもあると思う。だけど今回、浅野が土壇場でいい仕事をできたのはこれまでの信頼関係があったからこそ。浅野も〝やってやろう〟と発奮したはずだし、これまで短所とされていたけど、今回は長所に変わったんじゃないか」と指摘した。

その上で「森保監督はとにかく選手を大事にするタイプ。もちろん、すべてがうまくいくわけじゃないけど今回、勝ったことで雰囲気も変わるし、ここから立て直してくれる。今回は信頼する長友(佑都)や吉田(麻也)もサポートしてくれたみたいだし、一つ壁を乗り越えたってところでしょう」と語った。

ただ、アジア勢との厳しい戦いはこれからも続いていく。武田氏は今後に向けて「決定力は大きな課題だよね。もう少し攻撃面で形をつくれるようにならないと。連動性とプレー精度を上げていきたい。東京五輪後、すぐに予選が始まったから五輪組を含めて攻撃の形づくりをやらないといけない。キャンプとかできればいいんだけどね」とさらなるチームの強化を求めた。

武田氏と森保監督は〝ドーハの悲劇〟で知られる米国W杯アジア最終予選をともに戦った元チームメート。「あのときも厳しい戦いだったし、森保監督もいろいろな経験をしているからね。まだ十分に巻き返せるし、きっとW杯切符をつかんでくれるよ」と、旧友の奮闘を期待している。

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