平戸・黒田市政 4期目の課題・上 観光、地域経済振興 コロナ禍で停滞

今春、リニューアルした平戸城本丸最上階から平戸港などを望む。平戸の食文化、観光を支える平戸瀬戸、玄界灘が右奥に広がる=平戸市

 任期満了に伴う平戸市長選で現職の黒田成彦氏(61)が4選を果たした。3期12年間の実績を土台に、新型コロナウイルスの影響で疲弊した市勢回復を最重要課題に掲げる黒田市政。直面する課題を探る。
 黒田市長は2021年を脱コロナ元年と位置付け、4期目のスローガンを「コロナ禍を乗り越え、元気な平戸復活宣言」と定めた。
 3期目に推進した施策の一つが観光シンボル、平戸城大規模改築。国の提案で急きょ進めた「城泊」事業と併せて、訪日外国人誘客につなげる狙いだった。だが、コロナ禍で観光関連業界は軒並み停滞し、目算は大きく外れた。
 市民の多くが平戸城を軸とした観光施策に疑問を呈した。「本当に今、必要なもっと身近な生活につながる課題に予算を使ってほしい」。「城泊」事業には市民の厳しい目が向けられている。
 黒田市長は取材に「『城泊』について説明が足りなかった」と述べた。4期目に向け、観光客受け入れを巡り「準備はできていたがコロナだけが邪魔をしていた。ようやく収束の兆しが見え、国のGoTo事業も再開されるはず。市民の前向きな気持ちを引き出し、本来の平戸を取り戻したい」。即効性が高く経済波及効果が期待される、観光産業復興に自信を見せる。
 平戸観光協会幹部は、観光客の主要な目的の一つに食事があると強調する。同協会は毎年、秋から冬にかけて平戸産高級魚、アラとヒラメを市内の飲食店でPRするイベントを展開してきた。コロナ禍を受けた外食産業低迷が、水産業界だけでなく、平戸経済全体に暗い影を落としている。
 さらに平戸経済に大きく関わる問題として、佐賀県側の玄界灘に計画される洋上風力発電計画に、平戸市漁協の山中兵惠組合長は強い懸念を示す。「風力発電施設が海上にできれば、魚の流れが変わる。長崎県側の漁業にも深刻な影響が出る。こんな計画が実現されたら、大変なことになる」と不満をあらわにする。
 黒田市長は「計画内容に変更があったと聞いたが、平戸など県内漁業への影響は大きい。佐賀県側での民間事業で市政の関与が難しい。漁業者同士の横の連携に期待する」と応じた。山中組合長は「地元の漁業と経済を守り、将来につなげたい。重要な問題として市長にも協力してほしい」と期待を寄せる。

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