平戸・黒田市政 4期目の課題・下 空き家対策 移住促進へ支援制度拡充

中心市街地でも空き家、空き店舗が増加傾向。景観保全や移住、定住の観点から空き家、空き店舗対策強化が進み始めている=平戸市

 「築60年の一戸建て住宅を相続することになりました。どうしますか」。9月、長崎県平戸市は専門家を招き、空き家対策講座を実施。市民や市職員ら約20人が当事者感覚で家屋相続の心構えなどを学んだ。
 空き家を活用した宿泊施設を運営する市内の男性は「全ての空き家が活用できるわけではない。どうしていいか分からない人が多い」と施策充実を求める。
 管理できず、荒廃する空き家問題は全国の自治体の課題。市は今年5月末、空き家、空き店舗対策強化のため、古民家再生協会長崎(福田敏幸代表理事)と協定を締結した。締結式で福田代表理事は「空き家を減らすことは地域活性化につながる」と対策の効果を語った。
 市都市計画課によると、空き家約1300軒を確認(2015年調査)。20年度は解体相談が約100件、寄せられた。本年度から、現状や実数の再調査に取り組んでいる。
 初当選以来、12年ぶりの選挙戦を終えた黒田成彦市長は取材で市政の課題を問われ、「選挙戦で市内を回り、セイタカアワダチソウ(など雑草)に覆われた空き家、空き地が目立った。もったいない。癒やされる空間に活用し、『もったいない平戸』を『さすが平戸』に変えたい」と意義を語る。「幸い、(協会長崎との)協定がある。市内全14地域に設立したまちづくり運営協議会(まち協)にも関わってもらいたい」と青写真を描く。
 移住先として選ばれる要素として、空き家対策で環境を整えることに目を向け始めた平戸市。これまでは、子育て世代への支援に力を入れてきた。福岡市内から移住した自営業の男性は「市の担当課、近所の人たちからも、子どもを見守ってもらっていることを実感できる。経済的支援も福岡市とは比べられない」と高く評価する。
 市地域協働課は3世代同居のための住宅改修費支援など、生まれ育った市民、移住者が住み続けられる支援制度新設、拡充に着手した。4期目公約の1番目に「官民連携による多様性あふれるSDGsの先駆的な取り組み」を掲げる黒田市長。支え合うまちづくりを目指すかじ取りに、注目が集まる。

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