衆院選:注目区を行く【神奈川6区】公明不出馬で構図一変

(左から届け出順に)串田誠一氏、青柳陽一郎氏、古川直季氏

 「自民党、公明党の連立与党にこれからもお任せいただきたい」─。20日、横浜市保土ケ谷区の上星川駅前。自民の古川は公明の市議と街頭演説に立ち、力を込めた。

 神奈川県内で唯一、公明が公認候補を立ててきた自公連携の象徴区の構図が一変した。出馬予定だった公明議員が緊急事態宣言下に東京・銀座のクラブを訪れたことが発覚して今年2月に議員辞職。自民が実に25年ぶりに候補を擁立したからだ。

 この日は、6区を地盤に当選7回を数える元職で、公明県本部代表の上田勇も古川の激励に訪れた。旭区では市議を7期26年間務め知名度がある古川だが、保土ケ谷区では「全く無名の新人候補」(古川)。上田は古川を与党候補として多くの地元経営者らに紹介し、同区選出の自民市議の後援会幹部と選挙カーで「比例は公明党、6区は古川直季」と訴えた。

 「懸命に耕し育ててきた地盤」。公明の支持母体・創価学会の幹部が語るように、6区内には公明の組織票が埋まる。支援の見返りとして古川陣営には自民支持層から公明への比例票をどのくらい出せるのか「見積もり」が求められている。公明関係者は「自民が言葉だけでなく、どれだけこちらの選挙に協力するかだ」と厳しい。

 23日には前首相の菅義偉が同区内に古川の応援に入った。公明とのパイプが太いとされる菅は「野党共闘と公明・自民の連立政権の戦い。大接戦なんです。(古川は)初陣で知名度はないが将来性は間違いない」と支持を求めた。

 一方、前回衆院選で上田を破って小選挙区を制したのが、立民の青柳。相手が自民に代わったことで青柳陣営は「自公政権批判票の受け皿の役割が明確になった」とみている。

 「おーっと、4人連続で受け取りました。野球でいったら猛打賞」。20日夕の三ツ境駅前での街頭活動。有権者が政策チラシを受け取ると、立民の県議がマイクで盛り上げた。

 政権交代を求める民意の「風」を感じるという青柳は、その背景に8月の横浜市長選での勝利が評価されたと分析する。

 街頭演説で青柳がコロナ対策やカジノを含む統合型リゾート施設(IR)反対を掲げた立民推薦の新人候補が当選したことに触れると、聴衆から大きな拍手が上がった。青柳は「この勢いで国政も変えていき『政権交代』に結び付けたい」。

 前回比例復活した維新の串田は、自民、立民に割って入り、第三極としての存在感を示そうと躍起だ。陣営の一人は「前回までと違う構図になり、私たちが付け入る隙が出てきた」と前を向く。

 自民が初めて議席を獲得できるのか、野党が連勝するのか。自民関係者は「四半世紀ぶりの挑戦で組織づくりから始め、ようやく体制が整ってきた。これまで(自民候補がいなくて)行き場を失っていた票を掘り起こせるかが勝敗の鍵」と語った。=敬称略

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