衆院選終わる

 〈誰かが意図した通りの結果〉を指していう「思う壺(つぼ)」の「壺」はサイコロ賭博に使うあの小さな壺からきているという説が有力だ。腕利きのディーラーにかかればサイコロの目は思いのまま▲昨日投開票された衆院選、自民党は公示の直前に選挙の“顔”を掛け替えて臨んだ。新総裁は念押しするように「未来選択選挙」と繰り返し訴えた。数任せの政権運営、後手後手の新型コロナ対応-そんなあれやこれやの「過去」には目をつぶってもらえまいか、と▲さて「思う壺」とあいなったか。自民党は改選前の議席を減らし、選挙区では閣僚経験者や有力議員の敗北が相次いだ。先代、先々代政権の「負の遺産」が厳しく採点されたことは否定できまい。県内の小選挙区でも接戦が繰り広げられた。与党は絶対安定多数を確保し、「負けた」とは言い難いが、さりとて「信任された」などと胸を張れるか▲有権者は選挙結果の全体を選べない。例えば「与野党伯仲の緊張感ある国会」をどんなに強く望んでも自分1人の投票ではそれを実現することはできない▲小選挙区制度の下で、私たちは極端な選挙結果を何回となく経験してきた。〈1と6の目しか出ないサイコロのよう〉と書いたことがある▲認識を少しだけ改めておきたい。振り方ひとつで「3」や「4」の目も出る。“自民1強”を嫌う有権者のバランス感覚は示されたと見たい。衆院の新しい4年間が始まる。(智)

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