年子3人の進学を控えつつも貯蓄は80万「自営業家庭の家計管理と貯蓄のコツが知りたい」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、夫婦で事業を営む47歳の女性。家計の支出と事業経費が混ざりがちで、上手に家計管理や貯金ができないと悩む相談者。自営業者の家計管理や支出改善、貯蓄のコツやポイントは? FPの横山光昭氏がお答えします。


自宅で、夫婦で事業を営んでいます。法人化していますが、個人事業に毛の生えたようなもので、経費と家計がごちゃごちゃになりがちです。個人のカードから経費の支払いをすることもよくあり、この辺りは改善しなくてはいけないのかなと思っています。

家計は毎月黒字ですが、貯金がほぼない状況で、かつ子どもが中学3年生を筆頭に年子で3人。高校は私立高校に進学する可能性もありますし、教育費がかかり始めたらどうなってしまうのかと不安です。何とか貯めたいと思い、私(妻)は外でパートを始めていますが、なかなかうまく貯められません。

事業の方は安定しており、今後も収入は望めます。ですが、家計のほうでバランスを崩してしまうのではないかと心配です。やりくりの仕方やお金の貯め方について、現状の家計からどのようにするとよいのか、教えていただきたいと思っています。

【相談者プロフィール】

・相談者/女性、47歳 会社役員・パート

夫/52歳、会社代表

息子3人/中3・中2・中1

・手取り収入:総額約70万円

相談者/会社から月収13万1,000円、パート先から月収12万4,000円

夫/会社から月収44万5,000円

・貯金:約80万円(かき集めて)

・毎月の支出の目安: 68万6,000円

【毎月の支出の】

・住居費(住宅ローン):14万3,000円

・食費(外食含む):11万2,000円

・水道光熱費(電気・水道):3万3,000円(事業:家計=4:6で計算済み)

・通信費(スマホ4台・ネット回線):4万7,000円

・生命保険料:2万8,000円

・日用品代:1万円

・医療費:9,000円

・教育費(塾、部活、学校給食費など):12万3,000円

・交通費(カーシェア含む):9,000円

・被服費:2万1,000円

・交際費 :3,000円

・娯楽費:1万5,000円

・こづかい(子どものみ): 5,000円

・その他:4万8,000円

・クレジットカード支払い: 8万円

横山:毎月の収支は確かに黒字ですが、現状のままでは、お金を貯めるのは難しそうですね。ボーナスが出る働き方ではないので、毎月の黒字額をもう少ししっかりと出したいところです。

地道な節約の工夫が黒字を増やす

支出状況を拝見すると、各費目の支出額が大きく、メタボ家計状態です。現状では黒字でやりくりできているということですが、今のままですと、臨時で支出が増えた場合、あっという間に赤字化してしまいます。支出を見直し、黒字を増やすようにしましょう。ご相談者のご家庭の場合、毎月しっかり貯めていかないと、貯金できません。そこを意識しておきましょう。

気になる支出は、食費、水道光熱費、通信費、クレジットカードの支払いです。男の子3名で、今は食べ盛りでもあるでしょうから、食費は見直しても極端に減らないかもしれませんが、外食を減らしたり、食材の買い方、傷む前に食材を使い切る方法などを考えていくと、少しずつ食費を減らせる可能性があります。また、1~2週に一度、冷蔵庫の中身をすべて出し、消費期限の近い食材、鮮度が落ちてきている食材を食べるようにすることも効果的です。

水道光熱費は、洗濯の仕方、入浴の仕方、電気の付け消しを意識していくと良いでしょう。シャワーを節水シャワーヘッドに変える、よく使う部屋の電球をLEDにするなどの工夫を取り入れてもよいと思います。通信費はスマホやネットの使い方に合わせ、契約会社の変更も含めた、契約内容の見直しをしてみましょう。クレジットカードについては、次で説明しますね。

クレジットカードは個人用と分ける

支出状況を見ていると、家計と事業費が混ざってしまっているのは、主にクレジットカードの支払いのようです。内訳まではわかりませんが、ほとんどが会社関係の支払いということはないでしょうか。

今は帳簿を付けるにも、データの取り込みなどで簡単にできることが多いので、カード払いや銀行引き落とし等の支払いは、処理がしやすく便利です。ですが、個人のクレジットカードを使ってしまうと、その支出が見えにくくなってしまいます。できれば、個人のカードは個人または家計用にし、会社の支払いは法人カードを作るとよいと思います。

デビットカードを利用するという手も

ただ、法人のクレジットカードは年会費がかかることが多く、そこまでしていらないな、と思ってしまうこともあるでしょう。その場合、デビットカードの発行をしている法人口座を作り(今の法人口座で発行してもらえるならそれでOK)、VISAやJCBのブランドが付いた「ブランドデビットカード」を活用しましょう。年会費がかかる場合もありますが、1,000円、2,000円程度ですし、決済と同時に口座からお金が引かれる即時決済になりますから、会社の運営もしやすいでしょう。

このようにして、家計と法人を切り離すと、家計も、会社の会計もスッキリとするでしょう。

教育費は現金で準備。足りない分は奨学金を優先

今後のお金の貯め方ですが、教育費はあと3年後くらいから必要になってくると思いますから、現金をメインに貯めていきましょう。「私立高校に進学するかもしれない」ということですが、都内では、世帯年収910万円を上限の目安に授業料が補助されます。この上限となる年収は家族構成により異なりますが、パート収入を調整して補助を受けられる範囲に収入を収められると、設備費等の負担で済むようになります。

お子さん3人が年子なので、大学の学費が3人まとめてかかるという年が2年ありますから、お子さんと相談し、どのように学費を負担していくか、親が出す分、子どもが負担する分、奨学金や教育ローンを頼る分などを、検討しましょう。奨学金と教育ローンを天秤にかけなくてはいけないようならば、奨学金を優先できるとよいと思います。

老後資金は投資も取り入れて

そろそろご夫婦の老後資金作りも考えなくてはいけません。教育費づくりの最中はなかなかゆとりはないでしょうが、1万円や5,000円でもよいので、投資での積み立てを始めることをお勧めします。つみたてNISA、iDeCoなど税制優遇制度もありますから、メリット、デメリットを調べながら、活用することを検討してみてください。

投資は本当なら「生活防衛資金」(ひと月の生活費の7.5カ月~1年分が目安)ができてから始めることを勧めたいのですが、投資を継続している時間も大切。時間を味方につけた投資をしながら、教育費、生活防衛資金の貯金もすることが理想です。そのためにも、支出の見直しをしたら、しっかりと実行し、貯金、投資に回せるお金をねん出できるように頑張ってください。

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