元ドラ1が危惧する「一番危ない」指導とは? 金の卵のブレークを阻害する“過干渉”

元ヤクルトの村中恭兵氏【写真:荒川祐史】

元ヤクルト“ドラ1”村中恭兵氏「いい指導しても、本人が理解しないと」

ドラフト1位で指名された選手をはじめ、才能に溢れた“金の卵”たちが毎年、プロ野球の門を叩く。ただ、全ての選手がブレークできるわけでなく、頭角を現せないままユニホームを脱ぐケースも。自身の取り組み方やチーム状況、運など様々な要素が複雑に絡み合う中、一因として挙げられるのが首脳陣の指導。かつてのドラ1左腕は、自らの経験や後輩たちの姿から適度な指導のあり方を説く。

結果が全てのプロの世界。周囲の期待が注がれる“ドラ1”は特に、その成否が議論の的になることも少なくない。今季限りで現役を引退した元ヤクルトの村中恭兵氏も、2005年の高校生ドラフト1巡目で指名された当事者のひとり。東海大甲府高から入団した当初は、様々な人から様々なアドバイスを受けた経験も。自身がこれから指導者の道を志す上で、“タブー”を心に刻む。

素材がいいほど、開花させたいと躍起になるのが教える側の常。その選手が飛躍すれば、指導者自身の評価にもつながる。ただ村中氏は「指導者がいいというのは違うと思う。いくらいい指導をしたからと言って、本人が理解しないと良くはならないですから。選手自身が努力したから良くなったというのが大事」と言い切る。

パニック起こす選手「いろんなこと言われて、頭では分かっているけどできない」

危惧するのは、過干渉。「一番危ない。自分で考えてできる選手には、そんなにアドバイスはいらないと思います」。間近で見てきた“成功例”は、今季プロ4年目で本塁打王を獲得したヤクルトの村上宗隆内野手。「『1年目からあのバッティングできんの?』ってくらい完成されていました。言うことないくらい仕上がっていました」。必要最小限の指導が、最短でのブレークにつながった要因であるとみる。

一方で、“遠回り”したドラ1も見てきた。高校の後輩である中日の高橋周平内野手は、3球団競合の末にプロ入りするも、規定打席に到達したのは7年目。何度も何度も打撃で試行錯誤を繰り返し、苦しみの先に自らの地位を確立した。村中氏は、高校時代の高橋の姿を引き合いに「何も変える必要ないじゃんってくらい、すっごいバッターだなと思ったのを覚えています」と強調。もちろん指導が全ての原因とは思わないが、選手の“咀嚼力”にも限界があると言う。

「いろんなこと言われて、頭では分かっているけどできないんです。余計に訳が分からなくなって、パニックになることが多い」

“教えること”が指導の全てではない。あえて口出しせず、見守ることも指導のひとつ。プロ入り前から引退後は指導者を志すと決めていたという村中氏は「自分を実験台にいろいろ試してきました。引き出しは多いに越したことはないので」と知識を蓄えてきた。「どこが悪くて、どこを直しちゃいけないか、指導者には見極める責任がある」。自らにも言い聞かせ、第2の人生を歩んでいくつもりだ。(記事提供:First-Pitch編集部)

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