<ルポ> 入学理由、生徒への対応… 変化する佐世保中央高夜間部の現場、さまざまな学ぶ場提供

英語の授業をする濱本教諭

 佐世保中央高・夜間部エンカレッジコースは、多様な学びの要望に応えようと2018年度に開設した。スタートすると“本家”の夜間コースよりも出願者数が多く、夜間コースが1学年1クラスなのに対し、エンカレッジコースは2クラスある。
 夜間部の澤邊晃士教頭は「生徒が夜間高校に入学する理由が変わってきた」と言う。「以前は勤労学生が多かったが、今は朝起きられなかったり、授業時間が昼間より短かったりする点などが入学理由になっている」と説明する。アルバイト率も夜間コースが約7割で、エンカレッジコースは約5割。生徒のほとんどが仕事をしていた時代とは明らかに違ってきている。
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 濱本功二教諭は1987年に教員になって以降、県内の定時制高校を中心に教員生活を送ってきた。「80年代はやんちゃで荒々しい子も多くいたが彼らは分かりやすかった。今は反発などはしないが代わりに分かりにくい」と生徒たちの変化を肌で感じている。
 さまざまな生徒と関わり、「必要な人にこそサポートが行き届いていない」と感じている。例えば、一定の基準を満たしていれば授業料が実質無償になる制度がある。ところが親が外国人で日本語が不得意だったり、親と子の関係が良好でなかったりして、書類を理解したり記入したりすることができない家庭もある。
 こうした家庭は親と連絡がつかないことも多く、学校現場としても対応のしようがない。そのうちに状況は悪化し、子どもにまで影響が及んでいく。助けたくてもどうしようもできない状況を何度も経験してきたという。濱本教諭は「せめて教育だけは平等に受けさせたい」と話す。
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 生徒の多くは中学時代に不登校を経験している。それだけに1年時に退学する生徒が多く、学校としても対応を重視している。2年に進級できれば、ほとんどの生徒が卒業していくという。
 同校では2人のスクールカウンセラー(SC)が週に2回程度、約5時間勤務して継続的なケアを提供している。夜間部では毎年1年生全員にSCかスクールソーシャルワーカーいずれかとの面談を実施。生徒や親との接し方などを教員がSCに相談するケースもあり、SCの役割は広がっている。
 生徒と家族、SCなどをつなぐコーディネーターの教員は「置かれている状況が彼らにとっての“普通”なので、それがいかに改善する余地がある状況かに気付いていない場合もある。深刻化する前に出会える体制づくりが必要」と語気を強めた。
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 通信制は、生徒数512人と全課程の中で最も多く、年齢層も10代~40代と幅広い。生徒は自宅学習を軸に、月に数回、授業に当たる「面談指導」を学校で受け、添削課題を提出。試験に合格すれば単位を取得できる。登校する機会が少ない分、引きこもり傾向の強い生徒が入学するケースも多いという。
 通信制の永田英樹教頭は「いったん学校に背を向けたり、向けざるを得なかったりした子どもが、もう一度頑張ってみようとチャレンジする課程。教育のセーフティーネットという面もある」と説明する。
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 昼間部は、授業時間など全日制との違いがほとんど無く、アルバイトも夜間部と異なり原則禁止だ。ただ、通学する生徒の多くは他の課程同様に不登校経験者。そのため、よりきめ細やかなサポートをしようと昨年から40人を2クラスに分けた。
 松尾修校長は「多様な学びの場を提供する体制づくりは、生徒にとっては正しい方向だろう。確かに現場の負担は増えるが、私たちは与えられた条件の中で精いっぱいやるしかない。学歴の保障や学びの受け皿として、生徒に学びの楽しさを伝えていきたい」と話した。

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