あす雲仙・普賢岳噴火31年 今なお崩落、不安定な現実を視察【ルポ】

溶岩ドーム上から南島原市を望む。足元は崩落が続く崖。直下には水無川と砂防ダム群が見えた=平成新山

 雲仙・普賢岳から198年ぶりに噴煙が上がったのは1990(平成2)年11月17日。翌年には溶岩ドーム(平成新山)が出現し、火砕流や土石流で多くの犠牲を出した。今、火山活動は落ち着いている。だが記者が15日、ドームの上に立つと、今なお崩落を続ける「不安定な現実」を目の当たりにした。同時に、この大地の息遣いを体感できる希有(けう)な空間を教育や観光に生かせないかとも思った。
 天を突き刺すようにそびえる岩尖(がんせん)は高さ30メートル。長崎県諫早市からも見える山頂のそれは、噴火活動の最後に地表に押し出されたマグマの塊。火山ガスでもろくなり、今年の大雨でも形が変わった。ただ崩れても影響は付近にとどまる。それより九州大地震火山観測研究センターの清水洋特任教授が気にするのは、島原市側へ舌状にせり出たドームの崩落だ。
 この日、同市と同センターが年2回開く防災視察登山に消防、自衛隊、警察、マスコミなど91人が参加した。
 市長の許可がなければ入れない警戒区域。登山道途中のゲートは普段施錠されているが、無断で登る人の目撃例もある。落石や転倒の恐れがあり危険だ。一行はヘルメットを着用し、専門家の案内で山腹の斜面をトラバース(横断)し標高を上げていく。それでも浮き石が多く、バランスを崩す参加者もいた。
 あちこちで水蒸気が上り、岩尖近くで温度を計ると91度。かつては700度以上だった。気象庁関係者は噴気も地震も「低調」と説明した。噴火警戒レベルは「1」。熊本地震や今年の阿蘇山噴火も「関連や影響はない」とみている。
 西の雲仙市側からドームの東側へ。足元は滑り台のように崩落斜面が伸び、直下には水無川と砂防ダム群、その先に南島原市深江の町並みが見えた。島原市方面へせり出したドームは「今も少しずつずり落ちている。大規模な直下地震で最悪の場合、有明海まで達する」と清水氏は警戒する。
 天然記念物でもある平成新山。誰もが景観をより間近で見て学べるようにならないか-。清水氏にそう水を向けると「専門ガイドの引率で少人数、自己責任であれば可能では。海外は事例がある」。ただ万が一の救助はヘリに頼らざるを得ず、条件整備はこれからの話という。
 岩石の合間から植物が顔を出していた。緑に覆われた隣の普賢岳や立岩の峰も元々は溶岩ドームだった。

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