2021年新語・流行語大賞ノミネートに見る「新型コロナ」からの回復度合い

新型コロナウイルスの感染は、かなり落ち着いた状況が続いています。NHKのHPによると、全国の新型コロナウイルス新規感染者の過去最高は8月20日の25,992人でしたが、10月27日の310人を最後に、最高水準の1%以上の水準になったことはありません。10月28日から直近11月11日まで15日連続して、新規感染者数は過去最高の1%未満という落ち着いた状況が続いています。

また、首相官邸のHPによると、ワクチン接種が完了した割合は、11月11日時点では74.5%になりました。ワクチン接種は順調に進んできました。こうした状況下で、コロナ禍からの回復が様々なところに表れています。

11月4日に発表された「2021ユーキャン新語・流行語大賞」のノミネート語30では、今年も「新型コロナウイルス」関連語が多く選ばれましたが、その割合は全体の20%にとどまり、2020年の50%に比べると大きく低下しました。

写真:2020年の新語・流行語 年間大賞「3密」<長田洋平/アフロ>


2020年と2021年、ノミネート語に見られる変化

2021年は「新型コロナウイルス」と「東京オリンピック・パラリンピック」が大きな話題になった1年だったと思われます。30のノミネート語をみると、「新型コロナウイルス」関連語では「自宅療養」「人流」「副反応」「変異株」「黙食/マスク会食」「路上飲み」の6語が選ばれました。全体の20%に当たります。

1年前の2020年はどうだったでしょうか。「新型コロナウイルス」関連語は、年間大賞に選ばれた「3密」をはじめとして、「新しい生活様式/ニューノーマル」、「アベノマスク」、「アマビエ」、「エッセンシャルワーカー」、「おうち時間/ステイホーム」、「オンライン○○」、「クラスター」、「GoToキャンペーン」、「自粛警察」、「Zoom映え」、「ソーシャルディスタンス」、「テレワーク/ワーケーション」、「濃厚接触者」、「PCR検査」と全体の50%に当たる15語でした。さらに、ステイホームが増えて利用が増えた「ウーバーイーツ」や、人との接触を避けることができる「ソロキャンプ」をも「新型コロナウイルス」関連語に加えると57%に当たる17語と過半数でした。

2020年は「新型コロナウイルス」一色といった感じでしたが、2021年では変化が見られ、他の分野の新語・流行語も出てきました。2021年では、「東京オリンピック・パラリンピック」関連語が9語で全体の30%と「新型コロナウイルス」関連語を上回りました。「東京オリンピック・パラリンピック」関連語では、「エペジーーン」「カエル愛」「ゴン攻め/ビッタビタ」「13歳、真夏の大冒険」「スギムライジング」「チキータ」「チャタンヤラクーサンクー」「ピクトグラム」「ぼったくり男爵」が選出されました。

米大リーグで今季大活躍したロサンゼルス・エンゼルスの「大谷翔平選手」関連語の「ショータイム」「リアル二刀流」も選ばれました。大谷選手は今季、打者としては155試合に出場して打率2割5分7厘、46本塁打、100打点、103得点、26盗塁をマークしました。また三塁打8本は両リーグ最多タイでした。

民間調査でも「新型コロナ」が景気リスク第1位から転落

日本経済研究センターが実施している「ESPフォーキャスト調査」では特別調査として2020年9月から奇数月に、「景気のリスク」をフォーキャスターが3つまで挙げています。

2021年9月調査までずっと「景気のリスク」の第1位は「新型コロナウイルス感染状況」でした。ところが、新型コロナウイルス新規感染者が急減した状況を反映して、11月調査で「新型コロナウイルス感染状況」が「中国景気の悪化」に抜かれ第2位となり、「景気のリスク」第1位の座を明け渡すという変化が生じました。なお、第3位はWTIで1バーレル80ドル台まで上昇してきた最近の原油価格動向を反映した「原油価格上昇」で、こちらも前回第3位だった「米国景気の悪化」を逆転しました。

続いて、「景気ウォッチャー調査」が厳しい内容だった8月調査から、9月調査で一転して先行き判断を中心に改善に転じたと前回リポートした続報です。10月調査では、9月末の緊急事態宣言解除の影響が現れ、現状判断が大幅に改善しました。

10月の景気ウォッチャー調査では、現状判断DI 55.5と前月差13.4ポイント上昇し、14年1月以来の高水準になりました。飲食関連、百貨店、旅行・交通関連、レジャー施設関連などの業種が大幅に改善しています。

9月調査では現状判断DIと先行き判断DIで改善の差が出ましたが、10月調査でその差は埋まったようです。10月の先行き判断DIは57.5と前月差0.9ポイントの小幅な上昇でしたが、57.5は統計史上最高だった2013年11月の57.6に次ぐ第2位の高さに該当します。

現状判断には、テレビや新聞で大きく報じられる方向性を表す現状判断DIの他に、水準を示す現状水準判断DIがあります。10月の現状水準判断DIは43.8で2019年9月の47.3以来の数字になり、コロナ禍以前の水準に持ち直しました。

ESPフォーキャスト調査の特別調査や、景気ウォッチャー調査の最近の結果は、コロナ禍からの回復を反映したものと言えるでしょう。

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