独身&一人っ子のため、親と自身の介護が心配な55歳男性。FPのアドバイスは?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、55歳、フリーランスプログラマの男性。独身で一人っ子のため、両親が介護状態になった時のお金や、自分自身の介護のことも心配されています。FPのアドバイスは? FPの飯田道子氏がお答えします。


まもなく職業人生が終了しますが、思った額(3,000万円)が貯金できていません。現在の職業は所謂「フリーランス(プログラマ)」で、収入が月によって倍違うことがあるのも悩みです。老後はどこかの大学で勉強しようと考えていますが、総額1,000万円程度要するようです。

現在母親所有のマンション暮らし(63平米)ですが、築15年経過し、老朽化が目立っています。さらに、親が今後要支援または要介護状態になった時に要するお金についても気にかかります。独身かつ一人っ子で親の親族間の関係もあまりよくないため、自分が要介護になった時、誰に頼るのかと言う問題もあります。

親は自分の住まいから1km離れた所に住んでいます。年金は父親が月25万くらい、母親が月6万5,000円程度(いずれも税込み)と聞いています。父親は身体障害者認定を受けていますが、幸い身の回りの世話は必要ない状態です。共に85歳を超えているので今後介護・介助の必要が高くなると思われます。

投資額が若干多いですが、会社員時代に貯めたお金でマンションを購入し、それをその後売却して得たお金を元手に、2008年頃、日本株と米国株を購入して放っておいたものです。今もつみたてNISAに3万3,000円をかけています。

取り止めがなくなってしまいましたが、「結局これからいくらかかるのか、寿命が尽きるまでにいくら必要となるか」が見えていない状態です。

【相談者プロフィール】

・男性、55歳、自営業、独身

・住居の形態:親所有物件に入居(千葉県)

・毎月の世帯の手取り金額:36万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:なし

・毎月の世帯の支出の目安:30万8,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:5,000円

・食費:2万5,000円

・水道光熱費:1万3,000円

・教育費:1万円

・保険料:17万7,000円(小規模共済4、国年基金4、iDeCo2.7、年金2、国保5)

・通信費:1万8,000円(主に固定回線。来年からもう少し安い業者に移行予定)

・お小遣い:1万円

・その他:5万円(主に税)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:1万9,000円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,700万円

・現在の投資総額:8,200万円

・現在の負債総額:0円

・老後資金:

国民+厚生年金:年120万円(65歳〜。4年半未納期間があるため任意加入する予定だが、それを含めない額)

国民年金基金:年47万円(64歳まで加入した場合)

企業年金:年19万円(15年)

小規模共済年金:年48万円(あと12年加入の場合)

個人年金:年60万円(70歳から10年間)

退職金なし(年金でもらうことにしたため)

第1種奨学金完済済み

飯田:今回は、フリーランスで働きながら、セカンドライフを迎えたら大学で勉強をしようとしている相談者様です。必要だと考えていた貯金ができておらず、不安を感じているご様子。投資等も行っていますが、一人っ子のため、ご両親の介護のことや、今後、どれくらいのお金がかかるのか、セカンドライフでかかる費用はどれくらいなのかが見えていないとのことです。では、ご両親の介護について、どのように取り組んでいくべきか、また、相談者様のセカンドライフにかかる費用について考えていきましょう。

ご両親の介護のベースは介護保険のサービスで!

頂いたデータを拝見すると、ご両親の年金受給合計額は、月額で31万5,000円とのこと。お父様は障害者の認定を受けていることのようですが、身の回りのことはできる状態のようですね。これから、介護を覚悟されているようですが、まずは、介護保険で利用できるサービスをもれなく活用できるよう、チェックしてみましょう。もちろん、必要なときにはケアマネージャーが相談に乗ってくれます。どのようなサービスが介護保険で適用されるのか、有料となるサービスは何か、アドバイスしてもらえます。あまり心配し過ぎないでください。

私の父親はケガが元で障害者の認定を受けていました。ただ、最後まで身の回りのことを自分で行い、入浴も一人で行っていました(見守りのみ行っていました)。

近くに住んでいると言っても別に暮しているため、ご両親のことが心配だと思いますが、介護が必要になる心配をするよりも、いかに介護が必要になるタイミングを先送りするのかを考えてみてはいかがでしょうか?

ご両親との会話はもちろんのこと、一緒に近所を散歩する等しながら、健康で過ごせているのか、今できることをできるだけ長くできるよう、見守ってあげてくださいね。

セカンドライフに必要になるお金を整理する

相談者様が懸念されている内容をまとめると、ご両親の介護、大学の学費、ご本人の介護問題、マンションの老朽化、セカンドライフの生活費用かと思います。

まず、ご両親の介護問題は、ベースとして介護保険である程度賄えます。通所介護なども利用できますので、必要になったときには、ケアマネージャーと一緒に考えてください。

ここからは、相談者様ご本人のことについて考えていきましょう。

目標額の預貯金額に届いていないとのことですが、投資分を含まない貯金総額は1,700万円、投資総額は8,200万円です。決して少ない金額ではありませんし、むしろ多いと思いますよ。

老後資金についても記載していただいていますが、計画的に積み立てもされていますので、大学の学費1,000万円を差し引いても現状で8,900万円残る計算です。毎月貯金もされていますので、セカンドライフを迎えるころには9,000万円は手元に残っているのではないでしょうか?

ただ、何にどれくらいの費用がかかるのか分からないと、不安はつきものです。大学の学費以外にかかりそうな費用をシミュレーションしてみることをお勧めします。

7200万円の支出があったとしても貯金から2190万円切り崩せば大丈夫

現在の支出額は月額30.8万円、保険料の支払いが終われば、月額13.1万円必要になる計算です。余裕を持って、月額20万円支払ったとする場合、65歳から30年間の生活費は、20万円×12カ月×30年間=7,200万円となります。

老後資金として準備されているベースとなっている国民+厚生年金は年120万円、国民年金基金は年47万円ですので、年間167万円、30年間では5,010万円です。その他にも得られる収入はありますが、5,010万円の収入があるため、7,200万円の支出があったとしても、2,190万円切り崩せば良い計算になります。

マンションを住み替えなかった場合にかかる修繕費は、規模や積み立てている修繕積立金の額によっても違ってきますが、おおよそ50万円~。数百万円単位でかかることは考えられません。心配なら一度、修繕積立金がどのようになっているのか、大規模修繕の予定時期を確認してください。

本人の介護問題について

懸念されているなかで、もっとも不安に感じているのは、ご本人の介護問題についてなのではないでしょうか?

今は一時金が低額なところもありますが、ある終身介護付き有料老人ホームの場合、1人入居で一時金2,500万円・三食食事をつけて月額12万円程度となりますので、介護に関する費用は含まれていませんが、住み替えなしで在宅介護も受けられ、相談者様の蓄えで生活可能です。ただし、入居一時金が1億円などの高額な施設もありますので、物件によると言えるでしょう。また、三食を施設でとると計算していますが、年齢を重ねている方は二食のみ施設に依頼される方が多いようです。

また、高齢者施設に入所する場合、身元引受人が必要になるのですが、そのような人がいないときには、身元保証サービスを利用するという方法があります。

一般財団法人全国シルバーライフ保証協会の場合、さまざまな保証プランが準備されています。高齢者施設に入所するときの保証金は33万円~。その他にもいくつかのパターンで保証を引き受けてもらえますので、イザというときの参考にして下さい。

実際に介護が必要になったときには、ご両親のケースと同様にケアマネージャーさんとしっかり話し合い、どのようなサービスが必要なのか考えていってください。

歳を重ねることを前向きに考えてみてください

相談者様は責任感が強く、まじめな方なのだと思います。ただ、年齢を重ねることを誰も避けることはできません。今すべきことは、自分に必要な情報を集めること。そして、ご両親とご本人がいつまでも健康で過ごせるよう、取り組んでいくことです。

いろいろと心配なことがあるかもしれませんが、楽しいことを考えてみてください。これから大学での勉強も計画されているとのこと。若い時と違い、年齢を重ねたからこその発見や楽しさも大いにあると思いますよ。陰ながら応援しています。くれぐれもお身体に気をつけてくださいね。

参考:高齢者の身元保証人の問題を全国対応|オーカスタイルの全国シルバーライフ保証協会

© 株式会社マネーフォワード