”生きる意味”知るため挑戦する 白血病を克服した研修医 熊谷さん、中学生に講演

「闘病中でも笑顔の写真が多いのは家族やたんぽぽ学級が支えてくれたから」と語る熊谷さん=長崎市立日見中

 中高時代の白血病を克服し、小児科医を目指す国立病院機構長崎医療センター(大村市)の研修医、熊谷知香さん(28)が19日、長崎市界2丁目の市立日見中で講演した。同じ小児科病棟で過ごした子どもの中には病が治らず命を落とした人もおり、「自分が生きている意味を知りたくて、いろいろなことに挑戦している」と語った。
 熊谷さんは中学3年の春に急性リンパ性白血病を発症した。長崎大学病院小児科病棟にある院内学級「たんぽぽ学級」で学び、高校に進学。苦しい闘病生活を心身両面で支えた主治医に憧れて医師を志し、初期研修を終える来春から小児科医として一歩を踏み出す。
 抗がん剤の副作用で頭痛や吐き気、顔の腫れなどに苦しみながら高校受験に挑んだ。それでも当時の写真に笑顔が多いのは「弱音を吐かず笑顔で接してくれる家族に支えられたから」。応援してくれる病棟の医師や友人、教員も心のよりどころで「高校合格は自分一人ではなく、みんなの目標になった」と振り返った。
 入院中は自分より幼い子が何人も命を落とした。「今も病気になった意味や、生きている意味の答えを見つけられずにいる」と熊谷さん。その意味を探すため、医療用ウィッグに使う髪を寄付したり献血ボランティアに参加したりしていると話し、生徒に向けて「学校に通えていることは当たり前じゃない。今を精いっぱい生きてほしい」とメッセージを送った。
 日見中での講演は平野俊男校長が13年前、たんぽぽ学級で熊谷さんに社会科を教えていた縁で実現。全校生徒や教職員ら約180人が聞いた。


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