住宅ローンを完済した50代夫婦「築浅のうちに売却して住み替えたほうがお得?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は50代の共働き夫婦。住宅ローンの支払いを終えた相談者。将来、介護付きマンションに移る前に、現在のマンションを築浅のうちに売却して、新しいマンションに住み替えたほうがお得かどうかを知りたいといいます。FPの横田健一氏がお答えします。


50代共働き夫婦で、中学生の子どもが1人います。新築で購入したマンションのローンを10年目で完済したので、老後に向けて家計を見直したいです。

現在の住環境には満足しており、不都合がない限りは住み続け、夫の定年後を目途に売却し、売却額と貯金の一部を合わせて 介護付マンションへ移ろうと話し合っています。その頃に働き盛りとなる子どもを煩わせることなく私たち夫婦は老い支度を自力でしたいという計画です。年金は、最新のねんきん定期便によると、 夫婦合わせて年額約300万です。

同じような状況の同世代の友人の多くが、マンション大規模修繕前のタイミングで売却し、居住エリアを変えず売却額と同じくらいの価格で新築や築浅マンションへ住み替えをしています。理由は、修繕積立金が徐々に上がることや、約10年ごとに室内設備等のメンテナス・交換で100万円単位の出費になるため、いっそのこと新しく綺麗なマンションに住み替えるのがベターとのこと。

これが賢明なマネープランなのかは私には見当が付かないのですが、マンションの資産価値という点では、ある程度の築年数で売却して買い替えを視野に入れておくのが正解なのでしょうか。周辺中古物件は築15年程度では大きな値崩れなく、売出し後は短期間で売買が成立しているようです。

今から20年後の現住居(=築30年)を安価で売却するよりは、買い替えを経て築浅の物件を売却する方が、売却額が高く老後資金の助けになるのだろうとは思います。が、買い替え・住み替えに伴う労力や仲介手数料などを加味すると、我が家の家計としては適切かと考えてしまいます。子どもの通学のこともあり、現居住地から10キロ以上離れるのは難しいです。

夫婦ともに実家(戸建て・ローンや負債無)があります。夫の実家は、両親の他界後に売却することが決まっています。私の実家には介護のため頻繁に行き来しており、メンテナンスしながら住み続けられる状態です。物価が安く、気候の良い所で、子どもの独立後に移住する選択肢も一応残してはいます。自家用車必須の環境や想定できてない出費と労力を勘案すると移住のハードルは高く、最終的には売却することになると考えています。

以上を踏まえ、現住のマンションを含めた資産の管理や、安定した貯蓄のため今後やるべき事や気をつける出費などについてアドバイスを頂きたいです。

よろしくお願い致します。

【相談者プロフィール】

・女性、50歳、フリーランス

・夫(50歳、会社員)、子ども(14歳)

・同居家族について:

・夫/会社員、60歳までは現在の収入のままで、それ以降65歳定年まで7割程度に。退職金は約2,500万。

・妻(私)/今春からフリーランスで不定期の仕事をしています。収入は一定しないので、妻の収入は家計には充てず、全額貯金(入力した毎月の貯蓄額には含めていません)。

・子ども/公立中学に通う、大学進学を希望しており、高校から私立を選ぶかは未定。

・住居の形態:持ち家(マンション・東京)

・毎月の世帯の手取り金額:50万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:150万円

・毎月の世帯の支出の目安:33万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:7万円(マンション管理費、修繕積立金、火災保険料、資産税などを月割りした額です。5年ごとに修繕積立金は5,000円~1万円ほど上がる予定です)

・食費:9万円

・水道光熱費:3万円

・教育費:2万円

・保険料:3万円

・通信費:1万円

・お小遣い:6万円

・その他:1万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:17万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):6,000万円

・現在の投資総額:2,000万円

・現在の負債総額:0円

・ボーナスからの年間貯蓄額:150万円

横田:ご相談頂きましてありがとうございます。株式会社ウェルスペントのファイナンシャルプランナー、横田健一です。

現在お住まいのマンションを含めた資産の管理、今後のマネープランについてのご相談ですね。まずは今後の人生におけるお金をざっくり計算してみるところから始めてみましょう。

65歳での予測資産は、約1億4,000万円とマンション(ローンなし)

現在想定されているライフプランでは、「夫の定年後を目途に介護付マンションへ移ろう」ということですので、65歳時点でどのくらいの資産状況になっているか、ざっくりですが、計算してみましょう。

現在の年間貯蓄額は、毎月の貯蓄とボーナスからの貯蓄の合計で17万円×12+150万円=354万円になっています。60歳以降65歳までは手取りが7割になると仮定すると、年間の貯蓄額は129万円となります。

つまり、65歳まで現在の生活水準が変わらないとすると、今後の資産増加額は、65歳で退職金2,500万円も含めて、354万円×10+129万円×5 + 2,500=6,685万円となります。

一方、現在はお子様が中学生ということで、大学まで進学されるとして高校、大学ともに私立、大学は私立理系とした場合、教育費は883万円程度と見込まれます。

つまり、

65歳時点の資産総額(見込み)=現在の資産(貯蓄6,000万円+投資2,000万円+マンション(ローンなし))+今後の資産形成分6,685万円-今後のお子様の教育費883万円

となりますから、最終的には以下のようになると見込まれます。

65歳時点の資産総額(見込み)=貯蓄1億1,802万円+投資2,000万円+マンション(ローンなし)

これまでの計算ですべて貯蓄にまわす予定のご相談者様の収入や、現在投資にまわされている2,000万円からのリターンは考慮していません。一方、今後値上がりする予定の修繕積立金や、想定外の支出が発生する可能性もありますが、大勢に大きな影響はないと思われます。

65歳から資産をどのように活用しますか?

次に、65歳以降の収支状況を確認してみましょう。

現在の支出は月額33万円ですが、教育費と保険料は65歳以降不要になっていると思われますので、生活水準が変わらなければ65歳以降の支出は月額28万円と見込まれます。

一方、ねんきん定期便によるとご夫婦の公的年金収入は約300万円、つまり月額25万円と見込まれます。

実際には社会保険料等のご負担があるものの、収入と支出の差は月額3万円であり、年間の社会保険料等の負担を考慮しても年間100万円を超える赤字になる可能性は低いと思われます。なお、一般的に高齢期では医療・介護費が増える傾向にありますが、生活費は低下していく傾向にありますので、支出が大きく膨らむということは考えづらいかと思います。

ご夫婦そろって100歳まで生きられるとした場合、65歳時点での1億4,000万円を使い切るには、年間400万円ずつ取り崩していく余力があります。年間400万円を使って取り崩し続けたとしても、まだお子様にはマンションや、ご実家を売却して最終的には相続されるかもしれない資産が残り、さらに実際には金融資産からの運用益も期待できます。

築浅で買い換えても手間に見合ったリターンが得られるかは微妙

これまで見てきたように、ご主人様の定年後もご自宅で過ごしていくと仮定するなら、お金の面で心配になる可能性は極めて低いと思われます。

介護付マンションへ移ることを検討されているということですが、具体的に予算は決められていますでしょうか。

その予算次第でお金が足りなくなる可能性は否定できません。そして、お金が足りなくなるくらいのホームにどうしても入居したい、ということであれば、少しでもお金を増やしていく努力が必要になるかもしれません。

しかし、「が、買い替え・住み替えに伴う労力や仲介手数料などを加味すると、我が家の家計としては適切かと考えてしまいます。」ということで、現在の住環境、お子様の教育環境などもふまえると、手間をかけて、お金を生み出す労力をかける必要性は高くないのではないかと思います。

また、築浅で買い替えて住み替えるからといって、その時点の市場環境によっては十分な経済効果が生まれるとは限らないことにもご留意いただければと思います。

今回のポイントをまとめると…

以上、ポイントをまとめますと以下のようになります。
●現在の収支状況と資産状況から大まかに試算すると、65歳時点では1億4,000万円近い金融資産と負債なしのマンションが手元に残っていると思われます。
●65歳以降も、そのままの生活を続けるのであれば、公的年金収入もありますのでお金の面で困る可能性は低いと思われます。
●介護付マンションの予算次第では、現在のマンションを売却して、といったことが必要になる可能性もありますが、マンションの売却と住み替えで必ずしも大きな経済効果が得られるとは限りません。

ご参考としていただけましたら幸いです。

© 株式会社マネーフォワード