つながる被災地

 60歳くらいか、男性が語り始める。「昔から洪水とともに生きてきた町。私たちはそれが分かっていながら高度経済成長の中で、この土地に家を建ててしまった。大きな失敗をしたことになる」▲2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。復興が進む被災地にその男性はたたずみ、先人の経験を生かせなかったことへの後悔を吐露した▲雲仙岳災害記念館(島原市)が「6.3大火砕流」から30年の節目に製作した動画「被災地をつなぐメッセージリレー」には、平成に起きた大規模災害の被災地の「今」が収められている▲「火山は敵、噴火の痕跡は隠せ、という考え方でしたが、普賢岳がノーを突きつけた」。2000年に噴火した北海道・有珠山。火山マイスターの女性は、島原半島を参考に被災建物を保存し、防災教育に役立てる取り組みが始まったと話した▲収録した被災地は10カ所。自然の猛威になすすべもなくのみ込まれた命もあれば、十分な備えと適切な行動で助かった命、助けられたはずの命もあった▲「他の被災地の現状を知りたくて、伝承者を紹介してもらった」と記念館の担当者。災害は起きる。古里の過去に学び、全国のノウハウも学ぶ。防災・減災への姿勢は常に謙虚でありたい。動画は記念館のホームページで公開中。(真)

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