「オスナは6割から7割の確率でスライダーに狙いを絞っていたと思います」
■ヤクルト 2ー1 オリックス(日本シリーズ・24日・東京ドーム)
「SMBC日本シリーズ2021」は24日、東京ドームで第4戦が行われ、ヤクルトが2-1でオリックスに競り勝った。対戦成績を3勝1敗とし、2001年以来20年ぶりの日本一に王手をかけた。勝負を分けたのは1-1の同点で迎えた6回2死一、二塁。ホセ・オスナ内野手が中前へ決勝適時打を放った場面にあった両チームの駆け引きを、現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が解説した。
勝負を分けたこの場面で、オリックスベンチは“右打者殺し”の右サイドスロー比嘉幹貴投手をマウンドへ送った。特に比嘉得意のスライダーは、右打者にとって外角へ鋭く逃げていく難物。右の長距離砲で初対戦のオスナがとらえるのは、至難の業のはずだった。
実際、比嘉と若月のバッテリーはオスナに対し、全5球スライダー系で攻めた。初球は外角低めに外れボール。2球目はやや高めの外角球を空振り。3球目には球速98キロのカーブを真ん中へ投じ、バックネット方向へのファウルを稼いだ。オスナは「しまった」とばかりに顔をしかめた。4球目も初球同様、外角低めへのボールとなった。
2ボール2ストライクからの5球目。外角低めのストライクゾーンに来たスライダーを、オスナは見事にとらえ中前へ運んだ。野口氏は「2ストライクでしたから、100%決めつけることはできなかったにしても、オスナは6割から7割の確率でスライダーに狙いを絞っていたと思います。初対戦とはいえ、事前にスコアラーから、右打者に対して勝負所で必ず出てくる投手として、比嘉の特長を頭にたたき込まれていたはずです」と言う。
「どんな“魔球”であっても、一辺倒では抑えられません」
さらに「あれだけ同じような曲がる球を見続けただけに、さすがにオスナは目が慣れていました。オリックスバッテリーとしては、カウント1-2と追い込んだ後の4球目あたりに、内角へストレートのボール球を1球見せておくべきでした。そうしておけば、狙い球に迷いが生じますし、タイミングも合わせづらかったはずです」と指摘した。
「どんな“魔球”であっても、今の打撃技術から言って、一辺倒では抑えられません」と野口氏。比嘉は続く西浦に対しては、カウント0-1から、内角の142キロ速球でファウルを打たせ、3球目にも内角速球のボール球を見せた上で、4球目の外角低めスライダーで泳がせ遊ゴロに仕留めた。こちらの攻め方が正解だったというわけだ。
「あの場面でオスナに対し内角へストレートを投じるのは、コントロールミスが怖い。その気持ちはよく分かります。ただ、それをやり切らないと、日本シリーズという大舞台は勝ち抜けないということでしょう。厳しい言い方をすれば、勇気が足りませんでした」と野口氏は振り返った。
ヤクルトは41歳10か月の先発・石川雅規投手が6回3安打1失点(自責点0)に抑え、セ・リーグの日本シリーズ最年長勝利を飾った。それでも、第4戦まで1点差が3試合、2点差が1試合。稀に見る激戦がどんな結末を迎えるかは、まだ予断を許さない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)