エイジェック都市対抗初出場 元ロッテ小林雅英コーチが選手と交わした「3つの約束」

今年からエイジェックのコーチに就任した小林雅英氏【写真提供:エイジェックスポーツマネジメント】

小林雅英氏は今年4月にエイジェックのコーチに就任

社会人野球最高峰の大会である都市対抗が、今月28日から12月9日まで東京ドームで行われる。硬式野球部創部わずか4年目で初出場のエイジェック(栃木県小山市)は今年から、かつてロッテ、メジャーリーグなどでクローザーとして活躍し日米通算234セーブを誇った小林雅英氏がコーチに就任。初の全国舞台進出をアシストした。

今年4月のコーチ就任時、小林氏はエイジェック投手陣と「3つの約束」を交わしたと言う。

1.まず1-1というカウントを作ろう
「2球に1球はストライクを取るということ。2-0にしてしまうと、打者有利になりますし、プロほどの細かい制球力がない社会人の投手にとっては、カウントを整えるのが大変になりますから。もちろん状況に応じて、2球で2ストライクを取っていってもいいのですが、大まかな目標としてです」と説明する。

2.四球で出した走者は絶対ホームへ返すな
「四球を出すな、と言っても、展開の中でどうしても出してしまうことはある。その走者をホームに返してしまうと、『無駄な四球』と批判されますが、無失点でベンチに戻ると、監督やコーチから『いい粘りだ』と褒められる。周囲の反応が180度違うのです。四球を出した時、監督、コーチ、守っている野手の顔色をうかがうことが一番いけない。出してもホームへは返さないという気持ちで、打者へ向かっていってほしいと考えています」

3.相手打者と“ケンカ”しろ
「言葉は悪いですが、投手陣には『マウンド上で困った顔、弱い表情を見せるな。見えた瞬間、俺は代える』と伝えています」

「僕の頭はもう来年5月の1次予選に向いています」

実は、小林氏を含め監督、コーチ4人は全員就任1年目。「僕らの当初の目標では、都市対抗出場は来年のはずでした」と明かす。「24~25歳の選手が多い若いチーム。創部4年目で伝統もなく、まだまだ足りないところはたくさんあります」。

ところがエイジェックは、1次予選(栃木)を勝ち抜き、2次予選(北関東)でも奮闘。第2代表決定戦でSUBARUに2-1で競り勝ち、初出場を決めてしまった。まるで人材派遣のエイジェックの創業20周年に合わせたかのような、“嬉しい誤算”だった。

小林氏は「結果が出たからといって、過信してはいけない」と投手陣を引き締める。都市対抗は、昨年と今年は東京五輪開催との重複を避けてこの時期に実施されたが、もともとは夏の風物詩。「来年は夏の都市対抗へ戻る予定で、5月には1次予選が始まる。僕の頭はもうそちらへ向いていますよ。追われる立場となる来年は、今年より厳しい状況になりますから」と語る。

今年の本大会は、今月28日の1回戦でNTT西日本(大阪市)と対戦する。7年連続32回目の出場で、昨年もベスト8に進出している強豪だ。「相手の胸を借りて、今の力を出せればいい」と小林氏。初出場に浮かれることなく、着実に段階を踏みながら若いチームを育てていく覚悟だ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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