指導の持論や葛藤つづる 長崎県高野連顧問会が「監督たちの思い」発行 競技の現状に疑問、提案も

「2021夏の終わりに『監督たちの思い』」の表紙

 長崎県高野連顧問会は県内指導者やマネジャーの寄稿、アンケートをまとめた冊子「2021夏の終わりに『監督たちの思い』」を発行した。部員数や練習環境をはじめ、各校の事情は異なる中、日々の指導の考え方や葛藤、コロナ禍の選手への気持ちをつづっている。巻末のアンケートでは人気競技を取り巻く現状への感想や疑問、提案を掲載。非売品で各学校や県立図書館に配布し、県高野連のホームページで公開している。
 指導者の寄稿は県高野連加盟56校に募って25人分を収録。指導者人生約40年で今夏引退した諫早農の宮原寛爾前監督は、自身が若い頃の「半強制的」な練習について「今は後悔しかありません」。ほかの部活動を見学して「目から鱗(うろこ)でした」と指導の転換を図った経験も紹介。「生徒を育成していくための準備には、相当な根気とパワーが必要」などと続けた。
 このほか「『主役は生徒』ということを忘れて自己中心的になっていたのではないか」と省みる監督や、努力した控え選手が九回に同点打を放った「忘れられない1勝」を振り返る部長も。幼少期に病弱だった自身を変えた野球に「恩返しをしたい、スポーツの素晴らしさを伝えたい。それが私の支えになっています」など、原動力や目標を記した指導者もいる。
 選手への感謝の言葉も多く、入部時に「甲子園だけが全てと思って3年間やってくれ」と伝える監督は、厳しい体験を経て引退した3年生へ「今だからこそ言える。『甲子園だけが全てじゃないよ』」と締めくくった。
 アンケートでは特待生の在り方やマスコミとの関わり方などについての見解を集約。部員確保に悩む心境や小所帯のやりがいを説く指導者の意見を含め、人気競技の功罪について考えてもらう内容になっている。企画者の北島弘道顧問は「高校野球の発展に少しでも寄与できれば幸い」としている。

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